暁の明星 宵の流星 #118
もう時間も深夜を過ぎ、話はやっと昂老人(こうろうじん)とリシュオン王子の話に移っていた。
「それでは、南の国が今、積極的にキイを捕らえようと必死になってるって事ですね」
シータがリシュオンの説明を受けてそう言った。
「そのようです。…多分、もうお分かりかと思いますが、かなりの数の南の兵士がこの北の国に流れ込んでいます。
北の第一王子が、セド王国の宝に目が眩み、南の宰相の口車に乗って、癒着している事は、隠しようもない事実。
多分、今行方をくらましている彼は、南の宰相の所でしょう。
……北の王宮としては、第一王子の目を何とか覚ましたい。あのような王子でも、第一王位継承者という思いもあるようですね。…ですが、今の王宮には、彼を止められるほどの金と兵力がない…。
考えあぐねて、北の姫の嫁ぎ先である我が国に、内密に助けを求めた、という現状で」
リシュオンの話に、キイがあからさまに苦い顔をした。
「…北の王は、人民を苦しめる結果を招いた、このような王子を厳罰に処さないおつもりなのか?
自分の国を他国に売るような王子だぞ。
それなのに第一王位継承者、という事で、そのような甘い考えを…。
まさか、このような人間を、ミンガン王は自分の跡を継がせようと思っておられるのか?」
周りを圧倒させるような王者の風格に、皆は思わず息を呑み、彼に見惚れた。
隣のアムイは、キイがこのように他国ではあるが、国家内情について、はっきりと自分の意見を言う姿を初めて見た気がして驚いた。
聖天風来寺(しょうてんふうらいじ)時代でも、どこか世間を斜めに見て、周りを茶化している風情だったし、とんでもない事をやらかして破門された後だって、その時を気の向くまま。政治なんて興味ない、世間などどこ吹く風よ、というキイだった。
賊党を叩きのめす理由だって、大そうな大義名分があるわけでもなく、ただ、その土地の女にほだされ不憫に思ったか、相手が絡んできて目障りだったから、というくらいだ。
国の情勢とか、政治とか、もちろんその国の王侯貴族が何をしてようが、無頓着な態度しか見た事がなかったアムイは、このようなキイを見て、彼について何でもわかっていると自負していたものが、根本から崩れていく感覚に陥った。
確かに、互いは分かり過ぎるほど分かり合える。だが、それは感情面で発揮される、という事が、アムイはこの時はっきりと、思い知らされたのである。魂は同じでも、別の肉を持って生まれれば、結局は別人…。彼が何を考え、思いあぐねているのか、それは本人しか計り知れない事なのだと、アムイは今更ながら身に染みた。
…だからこそ、幼い頃からの、水面下で互いにひとつに戻りたい激しい衝動と焦燥は、もしかしたら、別人であるという事実を消したい為だったのではないか、とまで思わせる。
…それにしても、キイはずるい。隠し事をしても無駄だぞ、とか自分には言うくせに、言ってる本人は、隠してる事ばかりじゃないか。
自分は一体、この長い年月、キイやこの世界の何を見てきたのだろうか…。
アムイは自身の事も含め、あらゆる事を考え直さなければならない時期だと自覚した。
そのようなアムイの気持ちに気づいているのかいないのか、キイはそのまま話を進めた。
「…確かに、この国は長子崇拝の傾向があるのは否めない。中には実力主義の国家もあるというのに、だ。
一国に立つ、君主が糞なら、国の安泰も望めまい。
……この北の国も、何ゆえこのような財政難に陥ったのか。
国民(くにたみ)あっての国家ぞ。その民を金のために売るような、そんな人間に将来この国を立て直す事ができるというのか。
……東の現状だって、王はご存知の筈。
あれはいろんな州村、民族がひしめき合っているせいで、他国がなかなか介入できないが、北は違うぞ。
…このままだと、何かのきっかけで一気に北は南に占領される」
キイの迫力に、リシュオンは身が引き締まる思いだった。
この方は、真に君主の貫禄がある…。セドの王家の血を引く話は聞いてはいたが、実際の本人を目の当たりにして、リシュオンは納得した。
「その事は、王も弟君であるシャイエイ王子も危惧されております。…ただ、危惧されておられても…。だから、我が国に相談なされたのでしょうが、今の北の王家は…特にミンガン王はかなり弱られています。持病をお持ちで、寝たり起きたりの状態。聡明と思われる第二王子のシャイエイ殿も、温和で優しすぎる性格のため、繊細なところがおありになり、ウツになりやすく、政務がきちんと出来ない事がしばしば。……利己的で我儘な所はあれ、第一王子の行動力を頼りにしていた事が大きい。だからこそ、このような状態に陥ったと思いますが」
「…優しいだけでは、今の情勢を乗り越えられぬ。国を治めるのも難しいだろう。
かといって、力のみで支配するのも俺は感心せぬが、…それにしても…」
キイは目を細め、深い溜息をした。
「……まぁ、まだ年端もいかぬ小さな姫を他国に嫁に出し、その嫁ぎ先に助けを求めるのは仕方がないだろう。
ただ、その嫁ぎ先に西の国を選んだのは、賢明だと思うがね」
「…アイリン姫は、我が国が大事にお守りいたします。…ただ、あの方は本当に純粋な方ゆえ、この件は一切知らせないよう命じてます。
…あの方が女性でなく、また長子であれば、きっと立派な君主になられたでしょうに。柔に見えて、なかなかの芯の強さをお持ちの方です。しかも聡明。本当に惜しいと思います」
その言葉にキイは嬉しそうに口をほころばした。
「そうか。アイリン姫はそのようなお方か。…リシュオンの話だと、オーンの姫巫女の座を蹴ってまで嫁入りしたという潔さ。神のお飾りでなく、俗世に身を投じようとするとは、なかなかの肝だ、はっはっは!」
アムイは思わず咳払いして、キイの脇を肘で小突いた。
キイの皮肉混じりな愉快な物言いに、周りはちょっと不思議そうな顔をしている。
確かにキイがセド王家の血を引く事は明確になっていたが、彼の母親が実はオーンの姫巫女だったとは、意外と知られていない。
それを知っているのは、王族名簿をよく見た人間か、その時の当事者くらいだ。彼が禁忌を犯した末に生まれた事実は、調べればすぐにわかる事でもあったが、神の禁忌に関わる内容なので、知った人間は災いや神国オーンを恐れてか、皆口を閉ざす者が多かった。そのために噂はあまり立たなかったのだ。
という事はつまり、神国オーンの天空飛来大聖堂(てんくうひらいだいせいどう)の最高責任者である、サーディオ最高天司長(さいこうてんしちょう)の姉君である元姫巫女がキイの母親で、その二人の末の妹の子であるアイリンとは従兄妹(いとこ)同士という事だ。
アムイは複雑そうな溜息をついて、肩を落とした。
この事については、キイの気持ちが手に取るようにわかっていたからだ。
キイ自身、オーンの最高天司長である叔父のサーディオとは、あのセドに攻め入った時に姿を見ただけで、全く会った事も話した事もない。
亡くなった育ての親、前聖天師長(ぜんしょうてんしちょう)竜虎(りゅうこ)から、たまに彼の話を聞いたくらいだ。
キイとしては、母の弟であるその叔父には、複雑な思いや苛つきを持っていたであろう。
(あいつは俺を殺そうとしたんだからね!)
苦々しくそう呟く、キイの姿は何度も見かけた。
その苦々しさは、いつしかオーンが崇める絶対神にも向けられる。
神と叔父に、悪態をついている姿は、まるで親に反抗している子供のようでもあったが…。
で、自分の従兄妹が、神の庇護の元には行かず(ここは叔父が巫女にと彼女を所望していた、という事を踏まえて)、乱世である、この俗世を選択した事に、爽快感を感じているらしかった。
…キイの叔父である、サーディオ最高天司長の真意はわからない。沈黙を守っているという事は、今でもキイを禁忌の末の罪の子という認識なのだろうか。天と通じているというキイが、絶対神の教えに反抗している、というのも、面白い話なのだけど。
「まあ、そういう経緯での。わしも王家に呼ばれ、リシュオン様とお会いし、双方協力する事になったのじゃ。
確かに、今のモウラ家は…、わしでも頼りなく感じるしのう」
昂老人が居心地悪そうにもぞもぞと足を組み替えた。
「それで…どうするおつもりなんですか?老師」
興味深そうにシータが身を乗り出した。…キイを聖天風来寺に連れて行く件はどうなったのか。彼は気がかりだった。
「とにかく、南の軍隊が北に入り込んでいる元の原因、【宵の流星】をこの国から敏速に出し、東の国に戻す事。
行方不明の第一王子を、説得し…いや、叶わねば無理にでも連れ戻す事。
南との癒着を断ち切り、今後は西に援助を頼む事…などなど。
それが、王宮と我らの協議の結果じゃ」
「という事は一秒でも早く、俺はこの国を出なくちゃならねぇ。東の聖天風来寺に、とにかく戻らねばなるまいな」
キイは長い睫を伏せて、こう呟いた。わかりきっている事だ。
今更な話ではあるが、自分の存在の影響力が、かなり表立っている事に、キイは本格的に覚悟した。
さあ、もう後には戻れないぞ、【宵の流星】。
キイの瞳が険しくなった。
彼の心に、育ての親である竜虎の言葉が甦る。
《お前は流星。この暗く、動乱が続く大地に、光を降り撒く流星よ。
お前の成すべき事を思い出せ。やるべき事を悟れ。
天に聞き、魂(たま)に聞き、大地に導かれ宿命なるものと通じ合え。
そのためにお前は生まれた。思い出してごらん、我が子よ》
キイの感情の波が変化した事に、隣のアムイは敏感に察知した。
(キイ…?)
それに影響されただろうか。何故かアムイの脳裏に、突然亡き竜虎との対話が甦ってきたのだ。
《アムイよ。お前にこの剣を授けよう》
それは自分が、キイの破壊行為の責任を取らされ、本人と共に破門を言い渡されたその夜の事だった。
聖天風来寺を出るため、荷造りをしていたアムイの元に、ふらりと竜虎がやって来て、いきなり剣を差し出したのだ。
アムイは面食らった。キイはその時、用足しに行ったのか、部屋にはいなかった。まるで、キイがいないのを見計らって現れた感じだった。だがそれ以上に、アムイが驚いたのは、竜虎から手渡された剣であった。
《りゅ…竜虎様、これは…》
アムイの手が震えた。なぜならばその剣は、竜虎が大事に持っていた名剣のひとつ、“影艶・明星(かげつや・めいせい)の剣”という立派なものだった。その名剣は、彼が昔、何の縁(えにし)かわからないが、どこかの高名な神職者から譲られたものと、言われていた。そしてその剣には、堂々と、聖天風来寺の紋、“風神天”が柄に刻まれていた。
《これはこの先、お前の役に立つ。お前ならこれを使いこなせる》
《し、しかし…。何ゆえ俺に、こんな大事なものを…》
アムイは竜虎の申し出に躊躇した。キイならいざ知らず、何故、自分なんかに…。
竜虎は戸惑うアムイをしばし見つめていたが、ふっと慈愛に満ちた優しい目をした。
《これでキイを守れ》
アムイの目が大きく見開かれた。
《確かにキイは、牢獄行き同然の所業を犯した罰で破門した。このような形で袂を別つのは残念だが、あれでも子供の頃から育てた愚息。こういう処分を下したとしても、私はまだ奴の事が可愛いらしい》
そう言うと、竜虎はニヤッとした。
《あんな不埒者より、お前の方がこの剣にふさわしい。まあ、将来キイに何かあった時は、きっとこれがお前を支えてくれるだろう》
《竜虎様…》
竜虎は無理やり押し付けるようにして、剣をアムイの手に握らせた。
《アムイよ、頼んだぞ》
剣の重みと、竜虎の言葉の重さで、アムイは息があがりそうだった。だが、ずっしりとした剣を身に感じて、アムイは覚悟を決めた。
《わかりました、竜虎様。大切に扱います》
その言葉を聞いた竜虎は、目尻を下げて、機嫌よくうんうんと頷いた。
そして彼は最後にこう言ったのだ。
《お前は明星。この暗く、動乱が続く大地に、夜明けを知らせる明星よ。
お前の成すべき事を思い出せるよう、やるべき事を悟れるよう、私は天に祈ろう。
地に聞き、魂(たま)に聞き、天空に導かれ宿命なるものと通じ合えるようにと。
そのためにお前は生まれてきたという事を、思い出せるようにとな…。我が子よ》
「では、色々と検討した結果、遅くても明後日の明け方までには、ここを出るという事で、皆さん大丈夫ですね?」
リシュオンの言葉で、アムイは我に返った。
「ええ。いつでもここを出られるよう、支度だけはできていますけど…」
シータが答えた。
「ただ、ここから東に入るには、山脈越えという、難関が待っています。そのための準備もあれこれ必要となるでしょうし、その上、王子が申し出てくださったように、キイを警護していただけるのなら、大人数での移動には、体力も気力も必要でしょう。…ですから、今から少しでも兵の方に休養を取っていただくためにも、このくらいの時間は必要かと…。本当は一秒でも早く出たい所なんですけど」
「シータの言うとおりじゃ。北と東の国境に横たわる、あの細長い山脈はのぉー。あれさえ越えればすぐに東なのじゃが」
「シャン山脈でしょ」
昂老人の話を聞いて、嫌そうにイェンランは言った。
そう、西から北に入る時、裏を抜けるために、この山脈を越えた時の辛さを思い出したのだ。
シャン山脈は、西の国から、ゲウラ中立国の国境をなぞり、なんと東との海岸線手前まで伸びている、超長い、まるで壁のような山脈であった。
「…確かに今は、正攻法で東に抜けるには危険すぎる。特に国境の門なんか、すでに彼らの目が光っているでしょうし、それに…」
リシュオンは言い淀んだ。
「それに?」
「ええ。自分達は海からこの国に入ったのですが…。それだからこそわかったのです。
海から東に抜けようと思いましたが、どうも厳しそうだということに。
驚きましたよ。東の荒波州(あらなみしゅう)の海軍が、お忍びでこの北の開港に来ている」
「荒波!」
キイは驚きの声を出した。
「なんてぇ事だ。東の荒くれ者も、北に入国しているっつーのかよ…。それって、まさかのまさか…だよなぁ?」
キイはちらりとりシュオンを窺った。
いつの間にかキイの言葉使いが、王者の風格から、普段のならず者風に戻っていた。アムイは何だかほっとして、湧き上がる笑いを噛み殺した。
「まさかも何も、もちろん【宵の流星】目当てだそうですよ」
「あちゃー」
あっさりしたリシュオンの答えに、キイは頭を抱えた。
「かーっ!っめんどくせっ!南の他に東かよ。…これじゃ、北のモウラは生きた心地がしねぇだろな」
「という事は、やはりキイの素性を知って…との事だろうか」
アムイの問いに、リシュオンは生真面目な顔で答えた。
「では、この話をお聞きにならなかったのですか?…つい最近、消失とされていた最後の王族名簿が出てきて公表された話を」
「王族名簿が…!?」
アムイとキイは同時に叫んだ。
「ええ。…荒波のアベル提督の今の愛妾が、東の国にその名簿を大公開したという話ですよ。そのためにキイ殿の素性が明らかになり、セド王国の宝と共に、世間は異常な盛り上がりになっているという…」
キイは頭をぶんぶんと振った。
「いや。その話は届いてなかった。…じゃ、結局東に戻ったとしても、騒ぎの最中に身を投じる事になるのか…」
「今以上、気が許せないわけだな…」
アムイはぼそっと呟くと、またもやじっと目を閉じ、腕を組んだ。
そしてしばらく何か思案すると、おもむろに目を開け、こう提案した。
「俺達にかえって警護はいらないのではないか?」
「アムイ?」
皆、一斉にアムイに注目した。
「キイはご覧のとおり、第九位以上の“気”を封じられているため、並みの人間と同じで、戦うのが厳しい状態でもある。動けない事はないが、多分、逃げる事で精一杯ではないかと思う。…そのようなキイを護ってもらうのはありがたい事と思う。しかしかえって、目立つのではないか?とにかくひっそりと小人数で移動した方が、いいような気がする。…それに、これ以上関係ない人間を巻き込んでは…」
「それもそうかもな」
すぐさま、キイは同意した。
「…俺達なんかと関わっていたら、命がいくつあっても足りないかもよ。やって来るお客さん方は、かなーり本気らしいしな」
「ちょっと待ってください、それも一理あるかと思いますが…。相手はかなりの多勢ですよ?もし、戦いになったら?軍隊と個人で戦うのなんて、無謀すぎる…」
リシュオンは顔をしかめた。
「だからこそ人数を少なくして、小回りをきかせ、分散させた方がいいような気がするんだ。かえって大勢で移動する方が…。
…とにかく俺達の最終目的地は、聖天風来寺までだし。ここからなら、国境を越えればそう遠くない筈だ」
そしてアムイは続いてきっぱりと言った。
「東に行くには、俺達だけで何とかなるだろう。そうすればすぐにでもここを出発できるし、リシュオンは第一王子探索の件だってすぐに取り掛かれるじゃないか。それに…」
本心はもうこれ以上、自分達のために、他人を巻き込みたくなかった。そう、特に…。
「それにできれば関係ない人間は、無法地帯の東になんか連れて行きたくない。…だから、イェン、君の身の振り方を考えたいんだ」
アムイの言葉に、イェンランの表情が硬くなった。
彼女の様子を目に捉えながら、アムイは立て続けにこう言った。
「それとサクヤはここに残ってくれ。お前は俺達と行動しなくていいから。時間をずらし、落ち着いたら聖天風来寺に入門できるよう、爺さんに頼むつもりだ」
その言葉に、サクヤだけでなく仲間達は驚いた。
「何で、兄貴?!どうせ聖天風来寺に行くのなら、一緒に行ってもいいじゃないか!」
先ほど説明している時でも、物静かだったサクヤが、初めて声を荒げた。
(嫌だ。兄貴の傍を離れるなんて…)
何とも言えない焦燥感が、サクヤを襲った。
「何でオレだけ、ここに残らなくちゃいけないんだよ!それじゃあオレ、兄貴を護(まも)ることなんてできないだろう?…今までは兄貴の言う事を聞いて別行動を取った事もあるけど、今まで以上に厳しい状況なら、尚更一緒に…」
「護る?」
アムイの冷たい声が、サクヤの言葉を遮った。
「…悪いが、お前は足手まといなんだよ。…まだ腕も半人前で、気術も習得していないんじゃ、話にならない。
聖天風来寺で修行してから来い。話はそれから聞いてやる。
だからといって、一緒についてくるのだけは、もう勘弁してくれ。迷惑だ」
「兄貴…」
呆然としているサクヤの耳に、アムイの容赦ない言葉は続く。
「だから兄貴なんて呼ぶなと、いつも言っているだろう?
俺はお前を弟子として迎え入れたつもりも、、護ってもらおうともこれっぽちも思っていない!」
ぴしゃりと言い放つアムイに、サクヤは抗議しようと口を開いた。だが、あの初めて会ったとき同様、人を寄せ付けない緊迫した態度に、サクヤは言葉を呑み込んだ。(兄貴…?何で…)
「ねぇ、アムイそこまで言わなくても…」
その二人の様子を、シータとイェンランはハラハラしながら窺い、キイはじっと何やら考えながら黙って見ていた。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント