暁の明星 宵の流星 #126
丁度サクヤが鍋から菜っ葉を取り出していた時だった。
少年僧が突然慌てて厨房に転がり込んできた。
「白鷺(しらさぎ)さん!サクヤさん!」
「どうした?周明(しゅうめい)」
白鷺と呼ばれた先輩である青年僧侶が、火をくべながら声の方に顔を上げた。
周明という少年僧は真っ青になって叫んだ。
「襲撃です!」
彼はかなり動転している。
その言葉と彼の切羽詰った様子に、厨房の二人はすぐさまに反応した。
「どういうことだ」
白鷺は近くにあった汲み水で、釜の火を消し始めた。
「とにかく様子を見に行きますので、ここ、お願いできますか?」
サクヤは火の始末を白鷺に頼むと、がたがた震えている周明の肩を力強く掴んだ。
「落ち着いて!詳しく教えて」
と、サクヤは彼を促すと、厨房の外に彼と共に飛び出した。
「!!」
食堂に出た途端、サクヤは絶句した。
大きなバルコニーに続くガラスの窓の外から、数十人ともいえる武装した兵士が弓矢を放っているのが目に入ってきたのだ。
しかも矢の先には火種が…。
(何てことだ…)
冷や汗をかきながらも、サクヤは急いで再び厨房に戻って行く。
「白鷺さん!ここから早く逃げて!大勢の兵が火を放ってる!」
その言葉に白鷺も驚嘆し、思わず手に持っていた柄杓を落とした。
「屋敷の中には入ってくる気配は今の所ないけど、このまま出て行ったらまずい。
とにかく裏手から逃げましょう!」
サクヤは気が動転している二人の若い僧侶を励まし、やっとの思いで食堂から廊下に出ようとした。
ガシャーン!!
突然、食堂のバルコニーの扉のガラスが破られた。
2-3人の兵士が、破ったガラス扉から侵入してきたのを、振り向いたサクヤの目に飛び込んできた。
「急いで廊下に出て!」
サクヤはそう叫ぶと、懐に仕舞っていた短剣をかざし、兵士達に向かって行った。
「サクヤさん!!」
若い僧侶らは、顔面蒼白でおろおろするばかりだ。
「早く!」
サクヤは兵士達の剣を受けながら必死に大声を張り上げた。
「ミカエル少将!計画通り数十名を確認のために屋敷に侵入させました!」
近くで部下がそう報告すると、ミカエルはニヤリとして自分の顎を片手で撫でた。
「火攻めであぶり出すだけでは手落ちになる。
相手はあの【恒星の双璧】だ。…どさくさに紛れて逃げられても困るしな。
外に残っている者は、四方に散って敷地内から奴らを出さないように出入り口を塞げ!
逃げ出てきた者は、一人残らず宰相の元にお連れするという命令だ。
とにかく屋敷の人間全てを捕らえるんだ!」
彼の命令で、兵士達は敏速に行動に移した。
「とにかく我々の最終目的は【宵の流星】!目当てが手に入りさえすれば、それはそれで他は斬って捨ててもかまわん!…そう、天下の【暁の明星】だろうが、名のある気術士だろうがな!
しかしこのような状況だ。宵の君の身を誤魔化して逃れようとする可能性もある。それまでは本人と確認するまで、どんな輩でも引っ張って来るんだ」
ミカエルは確信していた。
いる!近くに暁の“金環の気”をひしひしと感じる。
ということは、その近くには必ずや宵の君もいる筈だ。
残念ながら、天下の宵様の“気”は封じられているために、噂の神気とやらを感じる事ができないのは惜しい。
話だけしか聞いていないミカエルは、【宵の流星】に興味津々であった。
あのティアン宰相が己を忘れてしまうほどの彼の美貌と力。
天人がこの地に降りた、神人の化身とまで言われるほどの…男。神の子孫であるセド王家の生き残り。
是非、直に自分のこの目で見たい。
ミカエルは普段冷静な自分が高揚しているのを感じていた。
「何ということだ!寺院に火を放つとは!!」
一方、本殿の奥、離れの屋敷炎上を背景に、大勢の僧侶達がこれまた多勢の兵士に囲まれ、寺の外に追い立てられていた。
そのうちの恰幅のよい、見るからに高僧という出で立ちの初老の男が大声を張り上げる。
「これはこれは、この寺のご住職ですかな?」
寺院を出てすぐ隣の森の茂みに待機していたティアンは言った。
岬の寺院の住職、呉僧正(くれそうじょう)は、ふくよかな頬を歪ませ、坊主頭まで真っ赤にさせながら憤った。
「お主らは一見、北の者ではないな?…どこの国だ!このような無礼、北の民は許すまいぞ!」
「お言葉ですが、本殿…御堂には火は放っておりませんよ。火移りすると神仏に申し訳ないと思いましてね。
……それに確かに我々は他国(よそ)者です。
ですが、あなた方を連れ出した兵士をよーくご覧くださいな」
意地悪く、また面白そうな声色で、ティアンは呉僧正に言った。
その言葉で、僧正はやっと冷静になって、まじまじと近くにいる兵士達を覗き込んだ。
「まさか…」
「ふっ。さすがに自分の国の人間はわかるようですな。
まぁ、彼らに感謝しなされ。せめて御堂や僧侶は無傷で、と懇願され、こうしてあなた方を救ったのですよ」
呉僧正はわなわなと震え、先程まで真っ赤だった顔は、今度は青くどす黒くなっていた。
「奇麗事を!御堂にさえ火を放たなければいいなんて簡単に言うのか。
離れとて、立派な寺の一部。つまり王家の所有物。一体なんでこのような事…」
ティアンの目が光った。
「ほう。王家の所有物、とな。なら、王家の者の許しがあれば、何の問題もありませんなぁ」
その言葉に僧正は眉をしかめた。
「許し…?まさか…」
呉僧正が口ごもったそのとき、一人の北の兵士がティアンの傍に駆け寄った。
「ティアン様、本殿には宵様のお姿はございませんでした。
やはり離れの方におられるのは間違いございません」
呉僧正の顔色が益々青くなっていく。
「では、半数はここで待機。後の者はミカエルに加勢せよ。
離れから出てくる者は、一人残らずここへ連れて来い!」
ティアンの声に北の兵士は頷くと、半数を残し、あっという間に境内に戻って行った。
「……ミャオロゥ様ですかな…?このような愚かなお企ては」
僧正は搾り出すような声を出した。
「住職、もう隠そうとしても無駄ですよ。…貴方はどっかの坊主に頼まれて、大陸の宝を匿っておられる。
あの宝は我らのもの。宝を使いこなせる者が手にするのは当たり前のことではありませんか。
使い方さえもわからぬ朴念仁どもが手にしてももったいない。それこそが愚か。
いくら頼まれたとはいえ大事に隠し持っていては、この世のためにはなりませんぞ」
「…お主…!」
呉僧正は一瞬喉が詰まった。この目の前の男の傲慢さと、前触れもなくいきなり火を放った強引さに嫌悪感が押し寄せてくる。
「何故にそう思うか。お主がどれだけのものぞ!
あの北の最高峰であられる昂極大法師(こうきょくだいほうし)様が使い方がわからぬとは、どういう了見…」
ティアンはニヤリとした。「昂極大法師」
呉僧正は、はっとしてティアンの顔を見上げた。
「あの狸爺。やはり後ろで手を回してたのか…。前から胡散臭いとは思っていたが」
妙な緊張感が二人の間を漂った。ティアンは目を細め、挑発的に言い放った。
「あのもうろく爺がどれだけのものぞ。この大陸で一番の術者はこの私だ。
宵が手に入ったあかつきには、嫌というほど思い知らせてやる!」
よほど昂極大法師に恨みでもあるのか。ティアンの激しい権幕に、呉僧正はただ唖然としているしかなかった。
サクヤは敵の兵士達と互角に戦い、とうとう最後の一人まで追い詰めた。
「…お前達は南の人間だな!?」
元々南で育ったサクヤだ。すぐに彼らが南の兵だと見破っていた。
ということは、やはりあの南の宰相ティアンが…。
「どうやってここがわかった!?」
サクヤは兵士と剣を交えながら叫んだ。
「この生意気な小僧め!簡単に俺を倒せると思うなよ!」
最後の兵士はサクヤよりもひと回り以上も体が大きな男だった。
しかもこのように言うだけあって、力もかなり強かった。
短剣だけのサクヤでは、到底力で敵わないのははっきりしている。
サクヤは得意なすばしっこさを発揮し、男を翻弄していく。
「このっ!ちょこまかするんじゃない!!」
カッとなった男は剣を大きく振り回してサクヤを追い掛け回し始めた。
だがサクヤの動きに追いつけず、とうとう兵士の疲れが出てきた。
そのために兵士は一瞬足をよろめかせた。
サクヤはそれを見逃さなかった。
ガキッ!!
サクヤは兵士の隙をついて、拳を顎の下に命中させた。
「ぐえっ!」
大男である筈の男が、自分よりも小柄なサクヤに吹っ飛ばされた。
倒れた兵士は、倒れた時に打ち所が悪かったせいか、そのまま動かない。
ほっとしたサクヤに、少年僧である周明の叫び声が聞こえた。
青くなってその声に駆けつけると、白鷺と周明を他の兵士が取り囲み、今まさに引きずられようとしていた。
「二人を離せ!!」
サクヤは短剣を振り上げて、彼らの中に突進していった。
もみ合いながらも、何とか二人の元に駆けつけ、兵士の手を引き剥がした。
「こいつも捕まえろ!」
いきなり割って入ったサクヤに驚いた兵士達は、今度はサクヤに集中して襲い掛かってきた。
しかもさっきよりも人数が多く、完全に多勢に無勢。サクヤと若い僧達はあっという間にもみくちゃにされてしまった。
だが、それでもサクヤは負けなかった。
関係のない僧侶達を巻き込むわけにはいかない。
周明達を守りながらも、彼は必死で兵士達をなぎ倒していった。
今までアムイと共に過ごしてきたことが、無駄にはなっていなかったのである。
だが、それでも大勢相手にサクヤは疲れを感じ始めた。
しかも火の手が回ってきたのか、きな臭い匂いが鼻腔を刺激し始めた。
(くそ!このままだと埒が明かない…。どうしたら…)
そう思った瞬間だった。
一人の兵士が周明めがけて大きな剣を振り上げてきたのが目に入った。
「危ない!」
サクヤは咄嗟に周明を庇って、彼に覆い被さった。
周明の悲鳴が上がる。サクヤも思わず目を瞑った。
ザクッ!!
肉を切るような鈍い音がして、人の倒れる音がサクヤの耳に飛び込んできた。
はっとして顔を上げると、そこにはアムイが剣を振り下ろした姿があった。
「兄貴!!」
サクヤは反射的に喜びの声を上げた。
アムイはまだ襲ってくる兵士を剣で迎え撃ちながら、叫んだ。
「この先に行け!早く!反対側は火の手が迫ってきている!
サクヤ!二人を連れて先に走れ!」
アムイは華麗な剣捌きで、迎え来る兵士を倒しながら行き先を指差した。
サクヤは頷くと、二人を誘導しながらアムイの指し示した方向へ走った。
アムイもその場にいる兵士を何とか片付けると、サクヤ達の後を追った。
火の手は上階から階下へと、着実に回って来ていた。
「ここからでしたら西の非常口が近いです。そこから外に出ましょう!」
青年僧の白鷺がサクヤと追ってきたアムイに言った。
「その非常口はどこに通じている?」
「西の裏道に通じています。この離れは高貴な方もお泊りになる屋敷ですので、何かあった場合を想定して、何箇所か避難口が設けられているのです。それぞれ敷地外に通じています」
「他にもそういう出口があるんだな?」
「はい」
「わかった」
アムイは納得すると、サクヤに急いでこう言った。
「サクヤ、この人達を連れて早くそこから出て安全な場所へ行ってくれ!」
「え?兄貴は?」
「実はキイもイェンも部屋にいなかったんだ…。もしかしたら食堂に下りてきているのかと思っていたのだが…」
「…いなかった?じゃあキイさん達を捜さないと!」
「ああ。爺さんやシータらと合流してくれていればいいんだが…。
まだ捜していない所が残っているんだ。そこを確認してから俺は避難する。
だからとにかくお前達は先に逃げてくれ。」
早口でまくし立てるアムイに只ならぬ空気を感じて、サクヤはふと不安になった。
「わかったけど…。ねぇ、兄貴はキイさんの存在はわかるんだよね?」
一瞬、アムイの頬が引きつった。
「…残念ながら、キイは“気”が封じられているせいで、近くにいたとして俺にもわかりにくい。
虹玉もただの玉となってしまったし…」
思いがけず自信無さげな声が返ってきて、サクヤは不思議そうな目でアムイの顔を見た。
実は、“自分が生きている限り、キイはこの世からいなくならない”と昔から強固に刷り込まれていたことが、この間の彼の寿命の話で一気に崩れていたのだ。それがアムイに不安と不信を生み、キイの存在に対する己の自信の無さに繋がっていた。
…キイの”気”が封じられている以上に、キイの存在を信じきることができない。そのために、彼との繋がりを手繰り寄せることができなくなっていたのだ。
滅多に動揺を表に出さないアムイの青ざめた表情を見て、サクヤは心配になった。
まるで親とはぐれ、不安で脅えている小さな子供のように見えたほどだ。
アムイにとってキイの存在が大きい事は、サクヤにもよくわかっている。
だが今まであんなに互いの存在を確信しあっていたのに、二人の間に何かあったのだろうか?
「じゃあキイさんが心配なら、一緒に捜すよ俺も」
思わずサクヤはそう言っていた。どうしても放っておける感じでなかった。
それは、一年という短い年月であったが、四六時中アムイの傍にいて、いつの間にかアムイの感情の波を読み取ることができるようになっていた、サクヤの心遣いでもあったのだ。
「いや」
アムイはそんなサクヤの気持ちがはっきりと伝わったのか、辛そうな、そして切ない顔を一瞬見せた。が、すぐに真顔に戻りこう言った。
「関係の無い僧侶達を危険な目に合わすことはできないだろ?
お前だってわかっている筈だ。俺の心配しなくていい。さ、早く行け」
「兄貴…」
「俺は大丈夫だから!
それよりもよく聞け、サクヤ。彼らをどこか安全な場所に連れて行ったら、そのまま真っ直ぐ、ここから北西寄りにあるチガンという小さな港町に向かえ。リシュオンからの提案で、ここで皆、落ち合うことになった。いいな?」
サクヤは何か言おうとしたが、言葉に詰まった。
本心はここでアムイと別れたくなかった。だが、そのために関係の無い人を危険に晒せない。
この事は自分でも痛いほどわかっている。
サクヤは何とか自分を納得させると、アムイに心配かけさせないように笑った。
「りょーかい、兄貴。どうか気をつけて」
アムイもそれを受けてふっと笑った。
「お前もな。チガン町で会おう」
そう言うとアムイはくるっと身を翻し、再び火の中に戻っていった。
それを見届けたサクヤはくるりと振り返ると、不安げに立っている白鷺と周明に微笑んだ。
「さ、早くここから脱出しましょう!」
二人の若い僧侶はおずおずと頷くと、サクヤに促されながら非常口の方に向かった。
「キイ!イェン!」
サクヤに落ち合い場所を教え、避難させたアムイは安堵した後、行方のわからない二人を捜すのに集中していた。
心の中では、どうしようもないくらいの不安が暴れていた。
何に対しての不安感?
いや、これは恐れにも近い感情だった。
そう、それは遠い昔。幼い頃に味わった恐怖を伴う喪失感に似ていた。
…自分の大事な人間を失うという…あの感覚。
母の血にまみれた姿。父の身体が刃(やいば)に貫かれた瞬間。
……どこから湧いてくるのかわからない、この感覚がずっとアムイを苛んでいた。
胸騒ぎがアムイを焦燥させていた。
「キイ!!」
アムイはキイの姿を求めた。
自分の半身。だけど分かれて生まれた時からは別の人間。
ずっと自分の傍にいると、肉が分かれても離れはしないと、幼い頃から呪文のように繰り返した誓い。
今はそのキイの存在、姿を見失いそうだった。
(キイ!どこにいるんだよ…!何で俺の目の前にいないんだよ!どうして俺の傍にいないんだ!!)
そう心で叫びながら、火の手が迫る一階の部屋を全て確認する。だが、思う人の姿は中にはなかった。
アムイは絶望にも似た思いで、炎を背に裏庭に続く扉から勢いよく飛び出した。
一方、いち早く襲撃を知り、皆にこの事を知らせようと展望台を飛び出し、再び屋敷に戻ろうとしたしたキイとイェンは愕然としていた。
ちょうど展望台に繋がる屋敷の入り口に置いてあった灯り用の油壺に、射そこなった火の矢が命中したらしく、入り口は火の海と化していたのだ。
「どうしようキイ、これじゃここから中には入れないわ」
「くそ…。お嬢ちゃん、武器は持っているかい?」
「…え、ええ。一応護身用の剣なら、いつも見につけてる。…ただ得意な武器は部屋に置いてきてしまったけれど…」
イェンランは口惜しそうに呟いた。
ほんのちょっと部屋から出るつもりだったから携帯しなかった。まさかこんな風になるとは思わなかった自分の甘さにイェンランは唇を噛んだ。
「いい。剣を持っているだけでも。
俺が嬢ちゃんを守るから。安心して、落ち着いて一緒に来てくれ」
「でも、キイ。貴方“気”を封じられてるんでしょ?大丈夫なの?」
その言葉にキイは何事も無い顔でははっと笑った。
「一応人並み以上の身体能力だけは残ってる。これは“気”に関わらず訓練されてモノにした力だからね。
まあ少しは気力が足りないかもしれないが」
イェンランは心底キイに感心した。本当にこの人は危険には動じないんだ…。
“気”を封じられ、力が半減しているなら焦燥や不安だってある筈だ。
だが、か弱い彼女に余計な不安を与えないよう、何でもないという態度を崩さない。
むしろ笑い飛ばし、面白がっているところさえある。
イェンランはキイが傍にいてくれるだけで、心強かった。
(…でも、その動じない態度も、アムイが絡むと脆くも崩れてしまうのだけど…)
イェンランはアムイを心底羨ましく思った。…そしてあのカァラの話を思い出し、アムイ以上の存在には、誰もがなれないということを思い知った。でも…。
「嬢ちゃん?」
思いに耽っていたらしかった。キイに話しかけられて、イェンランはハッとして顔を上げた。
「ごめん、で、これからどうするの?」
「とにかく裏庭の方に回ろう。正面から襲われているんだ。中の人間は裏口から逃げ出す方が普通に多いだろ。
敵があぶり出しにかかっているとすれば、兵を何人か分散させて正面の他の出入り口付近に待機させる。
他に避難口があればいいが、それでもきっと奴らは四方を囲むことくらいしていると思う。
つまり逃げ出してきた人間が危ない。だから先回りしようと思う」
「わかった」
イェンランは力強く頷くと、キイと共に裏庭の方に走った。
これからどんな危険が待っているか知れないというのに、不思議と彼女は全く怖くなかった。
それはキイの圧倒する存在が近くにあるからだ。
…イェンランの心には、キイへの絶対なる信頼が生まれていた。
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