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2012年11月19日 (月)

暁の明星 宵の流星 ♯180


「近年、ユナの女が少なくなった理由により、現在の婚姻形態を取り決めました。
女は多勢の夫を持つ事が許されたのです。
そのためにいくつか我々ユナの女が守らなければならない教えがあります。
それはこれから幸せな結婚生活を送る為にも、大変重要な事で……」

ロータスは前置きを読みながら、いささか憂鬱になっていく。
こんな事を学ぶよりも、もっと重要な事を学びたいわ。
半ば投げやりな気持ちでロータスは読み進める。

「……第三目、妻の不貞は許されない。特に婚姻契約をした家の夫以外の者と姦通すれば、即、重罪となる。
…第四目、妻は婚家の共有財産である。夫達が妻を共有する権利を心から受け入れ…妻は夫達に公平に接する事を義務とする
。第五…」

やっと長い文章を読み終わったロータスは、ほっと一息ついてその場に座った。
講師の夫人が先程の文章に補足を加える。
「結婚するという事は、多数の夫にお仕えするという事です。特に第三目と第四目は特に重要ですからね、胸に刻んでおくように。
何故なら、妻の一人の軽々しい行動で、家庭崩壊、一家離散…を招きかねないからです。
不貞は説明するまでもありませんが、第四目の内容は、幸せな家庭生活を営む為の重要事項と心得ましょう。
特定の夫だけを愛してはなりません。愛は“家”に注ぎましょう。
妻の愛は複数の夫に対し平等に分け与えなければなりません。
それが多夫一妻制を余儀なくされた、ユナの女の努めであり、知恵でもあるのです。…それが、家庭円満、夫婦円満の秘訣ですよ」


まだるこしい長い講義がやっと終わり、少女達は休憩を取るために騒々しく教室を飛び出して行く。
ロータスも廊下に出ようとしたその時、入り口に一人の老婦人 が立っているのに気がついて破顔した。
「おばあちゃん!どうしてここに?」
「ロータス、元気でやってるかい?」
「ええ、何とかね。でもまさかおばあちゃんに今日会えるとは思ってなかったわ」
「そうだろうねぇ。次の講師をするシュナが急に産気づいてね。その代理だよ」
「え!シュナさん、生まれるの?」
彼女は高官の妻であり、6人の子持ちの賢夫人だ。そして7人目がお腹の中に宿っていると言う事は皆知っていた。多分、その経験の豊かさを見込まれて講師をしていたのだろうが…。
「あの子も結構いい年齢での妊娠だったんで、周りは心配していたけど、まぁ、大丈夫だろうよ。何せ出産にかけてはもうベテラン中のベテランだからね」
「…ということは、次の授業、お産、とかに関係あるの?」

ロータスの目の前にいる老婦人は、彼女の母親の父親、つまり祖父の姉だ。本当の祖母ではないけれど、ロータスの母アニタを育ててくれた人でもある。しかも腕のいいお産婆さんだ。
「関係はあるけど、その前の事をね」
ロータスは祖母の言う言葉の意味がわからず首を傾げた。その様子を見ていた祖母は困ったような笑みを浮かべた。
「おいおいとわかるよ。女として大事な話だからね。
……それよりも、お前、つまらない顔して授業受けているんだねぇ…。いつもああなのかい?正直と言えば聞こえはいいけど、私は本当に心配だよ」
「どうして?」
娘らしい邪気のない顔で言うロータスに、祖母は益々苦笑する。
「お前は母親と違って、好奇心が強いというか、ま、それは長所として受け止めるが、特に反発心が子供の頃から強かった。
……わざと男の子の格好したり、外界に目をやったりしてね。
だけどね、ロータス。ユナの女として生まれたからには、この地の風習に従って生きるのが定め。後からできた掟だって、必然だからこそできたもの。それに倣って生きるのは…逃れなれないよ」
「おばあちゃん…」
「お前も知っていると思うが、アニタ(ロータスの母)は私の可愛いたった一人の弟の娘で…。だけど掟に背いた両親のために、どれだけあの子は苦労したか。
…生まれた子にはまったく罪はない、いやむしろユナでは子供は宝だ。それでも流刑地で生まれた、と言う事だけでも、他人の偏見な目は免れないのだよ…」
溜息と共に、この快活な孫娘に対して彼女は諭すように続けた。
「それを身を持って知っているからこそ、お前の母さんは素直で謙虚だった。…良妻賢母になろうと真面目に努力していた。
ただ、あの子は親から受け継いでしまった美貌のために、それは大変な思いをしたんだよ。
良家のお嬢様として生まれていたのなら、または地位の低い者でも上を目指す女には、それは有効な武器になったろうがね。
でもあの子はそうじゃなかった。普通の幸せを望んでいた。だからこそそれが不憫でならなかったよ。
このユナでは女、として生まれただけでも、重宝がられるわけだからね。並以上の付加価値なんてなくても、誰も嫁き遅れたりなんぞしない。みんな、それ相応の家に嫁いでいけるんだから」
ロータスは祖母が何故今更そんな話をするのかわからなかった。
母アニタの事情は小さい頃からしょっちゅう聞いているし、祖母がどれだけ母の持つ美貌に対して懸念していたかもうすでに知っていた。だがそれも母が長の方の唯一の奥方に納まってからは安心したのか、ここ何年か話題にした事なかった。
なのに今更?
ロータスは祖母の真意が計り知れなくて、目を瞬かせた。
子供である今の彼女にはわからなかったが、祖母の心配が母から年頃の自分に移ったのだという事に気づくのは、ロータスがもっと大人になってからである。
「いいね、ロータス。お前も母にならって、もっと真摯に女であるという事を受け止めなければならないよ。
それが一番、重要な事だ」
「どうして?」
「それがお前の幸せのためだからさ。…お前の顔は、母親には似ていないが、やはり血の繋がった娘だ。
お前の体型、華やかさ、目を引く存在感。…そして誰もが聞いていたくなる美しい声は、母親から受け継いでいる。
……私はね、心配なんだよ。お前も母親と同じ、苦労をしそうでね」
「いやだ、おばあちゃんったら!私はお母さんよりも綺麗じゃないし、それに今まで男の子達からちやほやされた事なかったわ」
そう言いながらロータスは頭の中で、妖精のように美しいミシル=カイトを思い浮かべ、気持ちがざらついた。
もてるというのは、彼女のような人をいうのだ。
ロータスはいつも男の子達の賞賛の目を集め、そしていつもレツに優しくされていた彼女に、嫉妬にも近い感情が湧くのを抑え切れなかった。
「…それは子供の頃の話じゃないか…。
ロータス、大人になれば、男が求める女のタイプというものは、変わっていくものだよ。
お前は母親と同じで、男に対する自分の影響をわからなさ過ぎる。
……それがいい方向にいく事を私は祈るばかりだ」
またもや意味深な言葉に、ロータスは首を傾げた。まだ無邪気な彼女に苦笑すると、祖母はポツリとこう言った。
「ロータスや、次の私の授業をよくお聞き。……これは大人の女として重要な事だからね」

次の授業は少女達にとって確かに衝撃的な内容だった。
とはいえ、もうすでに女舎に入ってきてすぐに、女性の体のこと中心ではあったが、簡単な性教育はされていた。
だが、今始まった授業の内容は、赤裸々な男女の性についての講義であった。
中には成人を迎えた年上の少女達から性の知識を密かに聞いていた耳年増な子達もいるが、余裕を持って聞いている彼女達にも、最後に息を詰めるような内容が語られた。

「……これからあなた達が大人になるために、女になるために、通らなくてはならない道があります。
それは男にも平等に訪れる、成人の儀式、というもの。皆はもうすでに知っていると思いますが…。
ユナでは15になったら、男女共に大人の仲間に入り、それぞれの責任において、生きる事が定められています。
そのために、大人の社会に認められ、受け入れられるために代々、儀式、というものを行ってきました。
男も儀式には色々な試練を与えられ、一人前の男であることを大人の社会に認められる事を重大としています。
女も、これから社会に出て、よき妻、よき母、となれるかどうかの修練の成果を大人社会に認められるために様々な試験を受けます。
その成績が高いものほど、女の価値がその時に決まると思いなさい。
……もちろん、いい婚家に嫁ぐ基準ともなりますよ…」
その言葉に少女達はざわめいた。講師であるロータスの祖母は、コホン、と咳をすると、再び口を開いた。
「何故、この授業の最後に、儀式の話を持ち出したのかというと、それはあなた方がもすぐ成人を迎える年齢だからです。
この成人の儀式の内容は、数えで15になる一年前に教えるもの。…そして、聞いたものは公言しないようにいい含められるもの。
それはどうしてだか、わかりますか?」
少女達は皆、思い思いに首を振る。
「それは全ての試練を終えて、最終的に社会がこの者を大人と見なす行為…を、必ず受けなければ、立派な成人とは見なされない。
ただ、その行為自体がデリケートな部分のあるもので、おいそれと簡単に教えられない、という事です」
その含んだ言い方に、少女達は再びざわめく。聞くにも恥ずかしい、あのような男女の交わりについての講義の後で、もったいぶったように聞かされる儀式の内容…。それはもしかしたら。
「…何となく、想像ついているかもしれませんが、そうですね。
はっきり言いましょう。
成人の儀式の仕上げに行われる事…それは樹祭司(じゅさいし)機関が定める相手と…その晩だけに契りを交わすという事です」
次の瞬間、少女達はどっとどよめいた。中には顔を真っ赤にして俯く少女もちらほらいるが、ほとんどが興味津々に興奮して隣と話をしている。
ロータスは一瞬、講師である祖母が何を言っているのか、わからなかった。
そりゃ、あのような本人が望まなくとも男が寄ってくる母の傍にいたロータスだ。
男が何を望み、何をしようとして母に近づこうとするのかくらい、幼い彼女にも薄々はわかっていた。ただ、今日のように具体的にどうするかは知らなかったが。
だから彼女が面食らっていたのは別の部分だった。
呆然とするロータスを残し、何もなかったように淡々と講師である祖母の話は続く。

「…そうです。男も女も分け隔てなく、成人の儀式の仕上げは、実践して異性を知る事。
つまり、男は童貞を、女は処女を捨ててこそ、ユナの一族では、真の意味での成人として認められるのです」

それが昔からのユナの一族では当たり前に行われていた儀式なのかは定かではない。
が、昔のユナは意外に性に関してはおおらかだったと聞く。
だから当時の民は、特に女性に関しての処女性にはあまり意味を持たなかったのだろう。
しかし、成人の儀式については、特に一妻多夫制となってから強固に儀式に組み込まれていったかと推測される。
それは男社会での牽制とも言えるものかもしれない。特定の相手の処女性にこだわることで、不穏な空気を男達に充満させるわけにはいかないからだ。
昔から儀式で一晩だけ契る相手を簡単に公表できるものではなかったが、女が少なくなってからは、その秘匿性が顕著になっていったようだ。
今では完全に最初の相手が誰であるかという事を、口に出してはいけない、特に婚姻する相手に漏らしてはならない、といった暗黙のルールができあがっていた。
それはある意味、男達に対して平等に女を配する為の配慮とも言えた。
何故なら、兄弟で妻を共有する為に、いくら今でも長子に優先権があるとしても、妻は共有の財産であり、兄弟平等にするという事がユナの家庭円満の基本とされていたからだ。簡単に言えば、妻が生娘で夫の誰が最初の男になる事を、兄弟間でもめられると困る、と言うことだ。
もちろん、長子優遇の考えだと初めは長子が手を付けた方が皆も納得するように思える。確かに今でも、長子を持ち上げている兄弟はユナの民にはかなりいると思う。が、それだとしても表面化しないところでは、兄弟の誰かが不満を持つ事だって有り得るのだ。
ならば、最初から生娘でないという方が、彼らには一番気楽で、確執が少なかった。
そして誰もが儀式の一貫として考えれば、そのようなものだと気持ちは片付けられる。そうすれば夫達は諦めがつくだろうし、もちろん妻は分け隔てなく夫に尽くす事ができる。
だから、その一晩限りの選ばれた相手、というのは、絶対に口外しない、という事が代々守られてきている。
それでも噂がのぼる事もあるが、皆、懸命にも噂という範疇にとどめている。
特に女の少ないユナの民が、女を奪い合わず、平和に共存する為には、どうしてもある程度の良識も必要となるのだ。
おかげで兄弟が二人以上の家には必ず妻が配され、どんなに魅力のない男でも、共有ではあるが結婚できるようになった。
細かいいざこざはあるが、今の所、ほとんどの家庭は上手くやっている。それが一族の繁栄に繋がり、そういう円満な家庭こそ、ユナの模範なのだ。

それもひとえに、こうして大人になるための教育を、男女問わず未成年のうちにきちんとされている制度があるからだろう。

そんな事よりも。

  成人の儀式の仕上げに行われる事…
  それは樹祭司(じゅさいし)機関が定める相手と…
  その晩だけに契りを交わすという事…………


頭の中で、その言葉だけがぐるぐると回る。

成人の…儀式の仕上げに…?何をするって?
定めた相手と?
契りを交わす…?  交わすっていうことは……。

その相手と…相手と………! 

真っ白になった頭が徐々にはっきりするにつれ、昔耳にした言葉が甦ってくる。

《それにね…》
《これ、ミシルの同室の人から聞いちゃったんだけど…。絶対黙っててくれる?》
《何々?》
それは一年前に偶然聞いてしまった、成人している少女達の話。

《ミシルの成人の儀式の相手、レツだったんだって!》


成人の、儀式の、──相手……!

ミシルの成人の儀式の相手……が……レツだった…???

その事実と、先程の男女についての赤裸々な講義の内容が自分の中で一致した途端、ロータスは愕然とした。

それに伴って、彼女の心を押し潰したのは、あの華奢で優美なミシルを引き寄せ、その白い肌を、あのレツの男らしい大きな手が撫でるように触れている場面だった。
二人は生まれたままの姿で寄り添い、優しくレツはミシルに口付けし、そして……。
そんな映像が頭に浮かんでしまうのを、ロータスは何度も振り払おうと必死になった。が、どうしてだか止められない。
激しく動機がする。どくんどくんとこめかみに血が集まり、頭がズキズキと痛む。胸がきゅっと締め付けられ、みぞおちの辺りが苦しくなって何かが迫り上(せりあが)ってきそうだ。

何とか平常心に戻ろうと試みたロータスであったが、どうしても二人が睦みあおうとするイメージが払拭できない。
あの澄んだ瞳がミシルだけに向けられ、もっと深い部分で二人は繋がろうと…。

それは彼女が初めてレツを、生身の男だと認識した瞬間だった。

今までは優しくて頼りになる一番大好きなお兄さん…そんな感覚で彼を見ていたつもりだった…。
でも違う。ロータスははっきりと悟ってしまった。
心の奥底で自分が彼に恋していたという事実に。憧れがいつしか思慕となっていた事に。
彼が他の女性と肌をかさねているであろう事実を、いや、現実をはっきりつきつけられた瞬間、ロータスは殴られたような衝撃と共に、自分の本当の気持ちに気付いたのだ。

嫌!!!

ロータスの耳には、もう完全に祖母の講義の声は届いていなかった。

何やら最終の儀式について、具体的な進め方を話していたようだったが、一向にロータスの頭には入ってこない。
ただ、自分の激しい感情と戦うのに必死だった。

《お似合いの二人》
昔から、周囲の人達がこっそりと言っていたのをロータスは知っていた。
背の高い黒髪の少年と、それに寄り添う小柄な妖精のような少女。
子供心に自分も、まるでを聖地に飾られている絵のような二人だと思っていた。

《ねぇ、知ってる?レツ=カルアツヤの想い人よ》
あの時の声が、はっきりとロータスの頭に響き渡る。
《ミシル=カイト。ほら、彼女よ》
《え~!?うそぉ!それじゃもう勝ち目ないじゃん!》

激しい鼓動を抑えようとロータスは胸の前に拳を当てて、ゆっくりと息を吐いた。
だが、彼女を襲った黒くて重い、嫌な感情は鎮まってくれない。

これが嫉妬だという事を知るには、彼女はまだ子供過ぎた。
どうしてここまでレツとミシルの事を考えると、拒絶を伴う苦しみと憎しみが湧くのか…。
ロータスは、初めて経験する激しい感情の渦に巻き込まれ、そんな自分が、只只恐ろしいと感じているだけだった。


その数週間、ロータスは何とも酷い毎日を送っていた。
授業は上の空で講師には怒られるし、食欲もなくなり、夜は夜で眠れない。
何とか眠ろうと目を閉じても、どうしてもレツとミシルの姿が浮かんでしまう。
みるみるやつれていく彼女に、周囲の友人達はどうしたのかと心配してくれた。
だけど本当の事が言えるわけがない。
だから当たり障りなく、ここ数週間続いている猛暑のせいにした。

東の果てとはいえ、ユナの島は南寄りに存在している。
だから尚更夏の暑さも北寄りの地よりもきつい。それでも完全に南に配している南の国よりはましではあるが。


なので初夏だというのに、ここ最近うだるような夏の日が続き、ロータスでなくても女舎の少女達もあまり元気ではなかった。
だが彼女達よりも相当な精神的ダメージを受けているロータスは、とうとう授業中にばったりと倒れてしまった。
教室を騒がせたという事も手伝って、その後ロータスは三日間自室療養を命じられてしまった。
同室のチエルや友人達にひどく心配され、過保護のように過ごしたロータスは、皆のお陰でやっといつもの調子を取り戻してきた。皆の献身的な様子に、ロータスはひどく反省した。もうこれ以上皆に迷惑をかけてはいけないと気付いたロータスは、あえてレツやミシルの事を考えるのを止めにした。もちろん、そんなに上手くなどいかなかったが、そのつど無理矢理頭の隅に追いやる事で、何とかロータスの精神は保たれた。

そんなこんなで夏が終わり、大人の世界では婚礼の儀が賑わう季節になった。

未婚の女性は、成人未成年関係なく女舎で過ごすが、成人している者としてない者とでは過ごす棟が違う。彼女達が交流できるのは、管理人や世話役などの人間が集う、棟と棟を廊下で結ぶ中央棟の二階の、共有遊技場──サロンと呼ばれる広間だけだった。
そして今日もまた、夕食前の一時を少女達がサロンで思い思い過ごしている。
いつもと変わらないその風景に、一つの波紋が広がったのは、数人の成人した娘が息を切らしてサロンに入ってきてからだった。

「聞いて、聞いて!」
彼女達は興奮しながら自分達の仲間と思われる、テラス側にいたグループに走り寄った。
成人を迎えている少女達は、誰もがわかるように緋色のサッシュベルトをしている。
こうしないと、間違って未成年に求婚してしまう男がいるからだ。未婚の成人女性がつけるその緋色のベルトは、ある意味『夫募集中』の目印にもなっていた。そして彼女達が嫁ぐ事が決まった時、そのベルトは紺色となる。

同じフロアにいるベルトを持たない未成年の少女達も、何事かと思って一斉に彼女達を見ていた。
だがロータスだけは、チエルと卓上ゲームに夢中になっていて、彼女達の騒ぎには気がつかない。
だが、興奮している彼女達の一人の言葉に、ロータスは思いっきり反応した。

「ミシル=カイトの婚儀がようやく決定したんですって!彼女を巡ってすごい争奪戦だったらしいよ!」


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