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2013年2月

2013年2月26日 (火)

告知(おしらせ)

毎回ご訪問くださりありがとうございます。

ええ、と。まだ次回の分が上がってはいないのですけれど、前回にも書いたように某所での投稿が無事すみましたのでお知らせです。

とはいえ、やっと第一章・宵の男のみですが。

かなり設定の変更、加筆をしました。
特にキイの容姿の描写、二人の通称(異名じゃないです)が変更となりました。

もしご興味ありましたら是非お立ち寄りください。
ただし、前にも書いたように18禁です!ご注意ください

ひっそりとコツコツ投稿していくと思います。(だってまだここが終わっていないですからね)

こちらはユーザー登録なしでも読めますが、ユーザーの方以外にコメントを残せないと思います。何かありましたらこちらのブログのほうに書いていただければ助かります。

場所は【小説家になろう】というサイトの女性向け18禁サイト、ムーンライトノベルズというところです。(18Rなのでリンクは張りません…)

直接の場所はこちら→  http://novel18.syosetu.com/n7541bn/
※注意!こちらのリンクは18歳未満お断りです。ご注意ください

ここでは此花(コハナ)かやんという名前です。


次回の第二章・暁の男は、三月中に投稿予定してます。こちらもかなりの加筆部分があるかと思います。
特に、その…アダルトな部分が!(遠い目)

それでもよろしければのぞきに来てください。

自分なりに頑張ってみたけど、まだまだだなぁと…。

それよりもこちらのほう、真剣に書き上げる所存です。早くこの章を終えたい!

ということですので―よろしくお願いします。

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2013年2月23日 (土)

暁の明星 宵の流星 #186  ※それと言い訳…… 

外に出ると闇が出迎えてくれた。その闇には無数に輝く星が冷え込んだ空気によって鮮明に煌めいている。ふと目線を下におろすと宿の門の両脇につけられている松明の明かりがかろうじて地上を照らし、周辺の様子を窺うのに苦労するほどではなかった。
アムイはつぅっと、門の外で待っている男を見止めた。
その男と目が合った瞬間、まるで引き寄せられるように互いに剣を交わらせていた。

もう、アムイは受け身でいるのをやめた。ここまで来たらレツの申し出のように決着をつけなければこの男は自分の話に耳を傾けてはくれないと思った。
カキンと耳に響く金属音を聞きながら、自分がレツとこうして剣を交えるのはこれで三度目だと思い出す。
二度目は再会の時に、そして最初の手合わせは……あの時はユナの砦で、自分がロータスに匿われていたのを夫である彼に見つかった時だ。


最初の三日間は地獄の苦しみを味わった。
それだけ自分の怪我はひどかったらしい。
怪我のために高熱が出て、意識だって朦朧としていた。
意識が戻ったのは四日目だ。目を開けると心配そうな緑の瞳が自分を覗き込んでいた。


彼女――ロータスはアムイを見つけた後、すぐに弟のガラムに協力させ、瀕死の彼を近くの小屋まで運んだ。その小さな入り江の近くには、移動人数が多い場合に誂えた予備の宿泊場が点在している。
幸いなことに近く始まる祈願夜(きがんや)を本島で過ごす人間が多かったため、今この砦に滞在している人間が少なかった。したがってこの砦から離れている入り江付近の小屋には誰もいないし滅多には訪れない。人が多くなる時期に手入れをするだけの、本当に普段は放っておかれている場所だった。
事実、ロータスの夫達で今時分、砦に残っているのは二人だけだ。長夫のルオゥと四夫のトルビィ。
それももうしばらくすれば祈願夜のために大樹管理護衛官であるルオゥも本島に戻らなくてはならない。でもその入れ替わりにレツが休暇を取って砦に来る予定だった。
砦の任務は、もとはギラン隊諜報部員である三男シキに命じられたものだった。あらゆる情報を手にするために、有能なシキは度々大陸の接点である砦に赴いていた。特にその手腕を見込まれて、一年の滞在を命じられたのは先月に入ってからだ。
それと同時に近衛隊副長であるレツも大樹管理護衛官のルオゥも砦を拠点とした任務を任され、トルビィも同じギラン隊であることから砦勤務となり、結局夫達はほとんど砦に入り浸ることになったのだ。否応なく妻であるロータスも夫達に従わなければならず、小さな息子二人と未成年の末の夫を舅と姑に任せて島を往復している。
砦の勤務はユナの戦士であれば必ずしなければならない大事な勤めだ。特に兄弟がすべて戦士であれば尚のこと。外界に接する重要な場であるとして、ここでの勤務を勤め上げればかなりの昇進と昇給を約束される。今回はシキのおかげでその役が回ってきたと言ってもおかしくなかった。当のシキはほとんど外界に出て行きっぱなしで砦にいない方が多いというのは皮肉なものだが。

ロータスの、渾身の看護がアムイの命を救った。
出血多量で死にかけていたアムイにさまざまな治療を施し、ユナ秘伝の延命薬がよそ者であるアムイに効いてくれたのが幸いし、みるみる彼は驚くほどの回復力をみせた。
ユナ秘伝の薬とは、大樹から採れる琥珀色の樹液からできる万能薬である。その第一の効能は生命力。何しろ宇宙の大樹(そらのたいじゅ)の命そのものを薬としたのだから。

本当に幸運だったのだ。
ロータスは人目を忍んでは看護のために入り江付近の小屋に通った。
もちろん、たった一人、不安を抱えた弟のガラムだけは知っていたが、夫達にも砦の上官にも誰にも内緒で彼女は男を匿ったのだ。
十日もすれば起き上がれるくらいに回復したのは驚いたが、意識を取り戻した男はとても褒められたものでない慇懃な態度だった。
今にすれば、ただ単に混乱していたことと、警戒していたからに他ならないが、それがまだ子供だったガラムには助けてもらって嫌な奴、としか映らなかった。
それが不満となって、つい義兄達の前でガラムの口からそのことがポロリと出て、発覚し大騒ぎとなってしまうのだが、もうその時点では、ロータスを命の恩人と認めたアムイと、ささやかな心の交流ができ始めていた。


ロータスの方も何か確信めいたものがなかったわけではない。だからわざとアマト元王子の肖像画を彼に見せ、反応を窺った。
微かな動揺を彼の目に見て、その時彼女は確信した。昔に一度だけ聞いたかの人の息子達の名前……シイ、だったかカムイだったか……やっと聞けた彼の本名はそのように似た響きだったし……。
ロータスは目の前の青年がどう考えても神王の直系 にしか思えない。
彼女の心はあの憧れた美しい元神王太子の憂いた眼差しをまざまざと思い出し、彼との約束をゆっくりと噛みしめていた。

これもきっと天の導き。
彼を私の元へと送ったのはきっと大樹の御心なのだ。
……私は彼を護らなければならない……。

彼女の純粋で崇高なる思いに一点の曇りもなかった。だが、それを理解できるのは、いくら説明したとしても、あの場にいた長の方である義理の父と、側近のセツカくらいであろう。
強いて言えば彼女が女でなかったのなら。人妻という立場でなかったら。
──このような悲劇を生まなかったかもしれない。

彼女はこの怪我を負った初恋の君そっくりな男が、確証もなく簡単に身分を明かしてはならない存在であるということを理解していた。もちろん、彼女が世相に興味を持ち、ある程度の知識と見識を持ち合わせていた稀有な女性だったから、難なく理解できたことだったが。
その深い意味を知っていたからこそ、できれば中枢部、いや長の方に直接確認や指示を取るまでは、何が何でもアムイを護ろうと使命に燃えていた。
それが他者の目にどういう風に映ったのか、その時の彼女は全く考えもしなかったのだ。
いや、きちんと己の立場を思い出せたのなら、容易に考え付くことでもあった。
ただこの時のロータスは、自分がユナの女であり、人の妻であるという事実に思考がいかなかった。ただ早く彼を本島の中枢部に申告し、保護したかった。そればかりに囚われていて、基本的な事実を軽んじていたという事に、この後もの凄く後悔する。
それでも、まさかここまで自分が女であり妻であることがこんなにも障害になるとは、その時の彼女は思ってもみなかった。


――特に、彼女は知らなかった。

まさか夫であるレツが、彼女と匿われている男との会話を聞いていたなどと。

この世の中で一番愛している男に、とてつもなく大きな影を自分が落としたという事実さえも……。


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* *ここから言い訳(近況報告) * *


今回短くて申し訳ありません。
つい先日妹が絶対安静の中、ひと月も早く赤ちゃんを産みまして、周辺がバタバタしておりました。
早期早産の可能性があって、半年以上も入院して何とか持たせることができました。
ちょっと小さい子ちゃんだったけれど、母子ともに健康で(何と出産まで6時間という早さ!)しばらく姪は保育器に入っていますが、姉としてはやっと一安心です(ほっ)

20日にはその妹の夫である義弟のおかげで、ネットにもつながり、いざ更新、と頑張ってみたのですが、結局遅くなってしまいました。しかも短いし(泣)

ちょっといつもと違う環境で話を書いているせいもあって、まだ戸惑っているというか…。
新しくなったもう一台で(Windows8)書き始めているのですが、いやー、慣れない慣れない。
結局再び、いつものXPの方のパソコンで書いてます……。


それと今週中には、某所への投稿を始める為に、やっと加筆と修正部分が出来上がり、これまた慣れない小説投稿サイトでの投稿の仕方に頭を悩ませている次第。

……慣れないことはするものではありません……。
でも、やらないと慣れないですしね!(ううむ~ん)

こちらの方は、第一章を少し投稿してみてから詳細をお知らせいたします。
ただ、完全な18禁バージョンでありますので、18歳未満のお嬢様は今回はご遠慮ください
もちろん、そういう内容が苦手な御婦人もお避け下さい。
このブログでは15Rということで展開している部分を、かなり詳細に加筆している部分がございます(汗)特に冒頭は娼館でもありますので、察してくださいませ。
もし興味がありましたらこちらもよろしくお願いします。


結局書く時間をなかなか確保できないまま、すでに2月も後半に。
ユナの話が終わらないと、光輪も発動しない。
ううむ、ここは踏ん張りどきです。

後半になればなるほど、おのれの未熟さに泣いています。

それでもご訪問を本当に感謝しています。
目標の今年半ばの終了目指して頑張ります。

Rahu
結局イラストの方も書きかけで(苦笑)いつかペンタブをゲットしてパソコンで描きたい自分です……。ああ、金と暇が本当に欲しいよ~(愚)※しかしこの絵はいつか完成するのか?

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2013年2月16日 (土)

メンテナンス中・お知らせ

ただ今携帯から投稿中*
お知らせが遅くなりまして申し訳ありません
実はパソコンメンテナンス中で事情によりネットできません。
現在執筆中、こんな時なのでできるだけ書き貯めようと思います。

20日以降に投稿を予定しています。そのあたりで覗いてみてください。
よろしくお願いいたします。

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2013年2月11日 (月)

暁の明星 宵の流星#185

ちりり、と肌が粟立つ感覚にアムイは思わず息を詰めた。

目の前でセツカが説明をしている。その言葉を耳にしながら、もう一つの意識は他のところに囚われていた。
じりじりと這い上がってくるその感覚に……アムイは浮遊するロータスの霊魂に問いかけながら、隣の相方に視線だけを走らせた。


「私が島に着いた時、すでに祈願夜(きがんや)は終わっておりました。
そのまま私は彼女の姿を捜そうとしたのですが……。
もうすでに砦内では、彼女の姿が見えないと大騒ぎで、ガラムや彼女の夫達があちこちに捜し回っていた最中でした。用事で島に来たと言った私は彼らと合流し……」


キイもアムイの視線で、今、彼に起こっている現象に気がついた。ちりっと粟立つその感覚がシンクロし、何を訴えているかを如実に訴えている。だが、表は真摯にセツカの話に耳を傾けている。


「結局彼女は外に出たのかと、くまなく捜しましたが見つからず、とうとう最後に残った外界の扉に向かい、そこで彼女の無残な亡骸を発見した、というわけです」


その毛穴が沸き立つような感覚がどんどん濃く、激しくなってきた事にアムイは“気”を集中させる。
近くにいるはずのロータスの霊魂が動揺している波動を強く感じた瞬間、確信した。

「……来る」

それは本当にささやかな独り言、多分近くにいたシータも目の前にいるセツカ達すら届かないほどのささやきだったが、アムイの波動を感知しているキイにははっきりと聞こえた。
────その刹那、

「アムイ!」

振り絞った悲鳴のような少女の声が静まっている館内に響き、それを合図にするかのように二人の男は瞬時に動いた。
それは阿吽の呼吸とも言える、まるで示し合わせた俊敏かつ無駄のない動きだった。

キイは電光石火のごとく全く躊躇のない動作で、叫んだ少女に一身に向かい、アムイは己自身に向かう殺気と対峙するべく、剣の鞘に手をかける。

少女──イェンランを目指して走るキイは途中で大柄で黒髪の男とかち合うが、そんな事には目もくれず軽々とその男を飛び越えた。顔面を蒼白としている彼女の元へと突っ込むと、そのまま全身で庇うように覆い被さるように抱きかかえる。

──それも一瞬でのできごと。

当の彼女は唐突に揺さぶられ、すっぽりと鍛えて弾力のあるキイの腕に収まって、驚きで声にならない声を上げた。思いもしなかった彼の優しい花の香りにすっぽりと包まれたイェンランの小さな胸は、これ以上ないくらい大きな鼓動を打つ。

かたやアムイに向かってくる殺気の主は、初めのゆっくりとした足取りが、イェンランの叫びで弾かれる様にスピードを上げ、突進してきた。途中で自身の上を飛び越えたキイを掻い潜り、男は余所見もせずに一点に突っ込む。
無論、彼の目標は暁の明星。
青白い彼の刃(やいば)が宙を舞い、対象に向けて激しく振り下ろされた。
ガキン、と鈍い音を立てて、男の刃が阻止される。寸でのところでアムイの抜いた剣が男の攻撃を食い止めたからだ。
その刃(は)の下でアムイが男を見上げていた。闇夜のような男の双眸と底知れない色を湛えたアムイの黒い瞳が交差する。
「レツ。レツ=カルアツヤ」
食いしばった口元から、相手の男の名が放たれた。それは潰れてまるで唸るような声だった。

「暁、決着をつけに来た」

焼け付くような眼差しと打って変わって彼の声は淡々としていた。

「話をしたい、と言ってもあんたは聞いてくれなさそうだ」
アムイはレツの暗い目に宿る憎悪を認めて眉間に皺を寄せる。
「ない。話すようなことなど、何も」
即答だ。
次の瞬間くるりとレツは剣を回しアムイの剣を器用に外すと、間髪入れずに横腹に斬りかかる。それを絶妙なタイミングで回避したアムイもまた、隙のない動作で彼の剣を受けながら斬り込んでいく。

「やめなさいっ!」
セツカもまた、レツの存在を感じていたのだろう、いつの間にか後ろ手に回ってレツの背後に棒を突き立てていた。

「レツっ!」
この状況に動転しているのはガラムだけだった。取り乱して駆けつけようとした彼を、シータが静かに肩を掴んで引き止めていた。焦れるガラムは懸命にその手を払おうとするが、驚いたことに彼の力でさえ、シータの手は微動だにしなかった。
この見た目は女性と見間違うほど華奢な人の、どこにそんな力があるのだろう。とても信じられない。
「離して……」
頭を左右に振りながら情けない声を出すガラムに、シータは普段とは違うやけに丁寧な口調で語りかけた。
「落ち着いてください、ユナの未来の長よ。
どうかこの状況をよくご覧になり、ご自分自身の目で見、確かめ、冷静なるご判断を」
高くもなく、低くもないその朗々たる淀みない声に、不思議とガラムの心の揺れが静まっていく。少しづつ冷静な自分を取り戻し、そのわずかに戻った客観的な自分が己自身の心の分析を始めた。

そう、ガラムにとって自分自身の観念が覆してばかりの出来事が重なっていた。
何年も仇と信じて復讐しようとしていた相手が違うということも、自分が盲目的に信じてきたことに対して隠されていた事実が存在していたことも、信頼しきっていた身内にも見えない闇が存在しているということも……。
自分自身の価値観や考えがガラガラと音を立てて崩れていく。その恐怖と自分自身の軸への喪失感。本当を言えば、何を信じていいのかわからなかった。だから錯乱した。
自分はずっと、一族の者を信じ切っていた。それは基本だからだ。身内を信じないで誰が信じる。
またそうでなくては、一族の頂点とはなれないのではないか。ガラムはそう頑なに思っていた。
だが。
事実は違っているようだった。
どのくらいの真実が判明したのか、まだセツカの報告は途中だったために不明ではあるが、その結果にガラムは裏切られた思いを感じていた。……よそ者ではなく、犯人は身内に……。

「ガラム様」
自分の思考を遮るかのように、彼は突然名前を呼ばれた。
ぎくっとしてその声の主に顔を向ける。艶やかな化粧のために、間近で見ても女性と違わない美しい顔、琥珀のような茶色の瞳がじっと彼を見つめている。
その瞳は有無を言わせない鋼の強さが見て取れる。だが、反して彼の言葉は無理強いなどしない、とても柔らかなものだった。

「この世の中に、絶対、はありません。
大切なのは、何が真実でそうではないか。
起こってしまったことに対して、どう向かっていくか、ということだと思います。
信じることはとても大事です。それでも世の中は思ってもみないところへ流れていくことのほうが多い。裏切られることもあるでしょう。こんなはずではなかったと思うこともあるでしょう。
その時に長を頂く者として、どのように見、判断し、対処するか。
将来、一族の長にと願うのなら、どうか冷静に、自分がどういう態度をとればいいかをお考えください。
……もし自分が今、ユナの長であったならどうするか、を」

ガラムはまるで金縛りにあったように動けなかった。

自分は。
個人的な復讐のために……この四年間、何をしてきたんだろう。
ユナの長になる……その夢は初めからあった。
でも、姉が無残な死に方をしてから、ずっと己の心を占めていたのは憎悪だった。
長になると言いつつも、自分の優先順位はいつもどす黒い復讐心。長になるための鍛錬も、その延長線上には姉の仇を打つ、という感情が占めていた。

ならば姉の夫であるレツ、は?

ガラムは気が付いた。そう、まだ真相は解明していない。
もしレツが姉を殺めたのならば、暁に対するあの執念は何だ……。
若いガラムには到底想像もつかない、大人の事情というものがあるのだろうか。

「はっきりさせないと」
ガラムの呟きにシータの片眉が微かに動いた。
「……真実を……知らなければ……俺は判断できない」
「真実を」
「そうだ。……レツに聞かなければ……なぜ、扉の鍵を持っていたのか、あの夜何があったのかを」
その声には、先ほどの情けなさを微塵にも感じさせない、力強いものだった。
シータはそっと安堵の溜息を洩らす。そして唇の端をゆるりと上げると落ち着いた声でガラムに言った。
「ならばお確かめください。貴方の目と耳で、そして心で。個人ではなく、上に立つ者として。
……それが将来、貴方にとって一族の頂点となるための礎となりましょう」
そう言い切ると、シータはゆっくりとガラムの肩から手を離した。

..........................................................................................................................


とにかく。
この状況はどう考えていいのか。

全身で自分を守るかのようにすっぽりと彼の腕に抱かれているイェンランはかなり動揺していた。
頭を抱えられるようにしてキイの胸元に押し付けられている彼女の頬に、どくどくと彼の心臓の音が伝わってくる。
そろりとキイの顔を見上げると、キッとした眼差しで前方を睨む美しい横顔がある。
ズキン、ともドキンともいえる大きな躍動が全身を駆け巡る。それに伴い、彼女の全身はかぁっと燃えるように熱くなった。

(どうしてっ)
イェンランは真っ赤になって俯いた。
(どうして、どうして??何でこうなってるの?)

思いを寄せる相手と密着していることもそうだが、それ以上に彼女は腑に落ちない。
何故キイがここにいるのかを。自分の傍になぜに?
いや、頭の片隅ではわかっている。彼は自分の悲鳴を聞いて駆けつけて来てくれた。
自分を助けに来たのだとも理解できる。

……でも。
あの侵入者は確実にアムイを狙っていた。
アムイに危害を及ぼそうとしているのは明白で、部外にいた自分よりも彼を第一に守るのが普通だと思う。
事実敵は自分なんかにも目もくれていなかった。(冷静に今ならわかる)
もしもっと早く叫んでいたら、邪魔だとして斬り捨てられていた可能性もあるだろう。でもあの時点では自分よりもアムイの方が確実に危険に晒されていた。
だからそれを教えるために自分はアムイの名を叫んだのだ。その叫びの中には、アムイを助けてという意味だって含んでいた。

……それなのに。

イェンランはときめいてしまう自分に悪態をついた。
自惚れてはいけないと思いつつ、それでも嬉しいと思ってしまう自分が浅ましい。

あんなに男に触れられると恐怖のあまり身が竦み、気分が悪くなる自分が、彼の腕の中で蕩けるような気分で安堵しているということも──、いや、それ以上にアムイを第一に考えてる筈のキイが躊躇なく自分を守りに来てくれた、という……喜びが勝る。

頭の片隅では、女に甘くて優しいというキイなら自分でなくてもそうしたかも……という考えもあるにはあるが、まるで大事なものを守るような彼の行動に、イェンランは眩暈を感じるほどの愉悦に襲われた。

イェンランの理性がその時ぷつりと切れた。
もう、勘違いでも何でもいい、────素直に……嬉しいっ!

舞い上がったイェンランは身を震わし、気持ちがふわふわしてくるのに抗えなかった。
その彼女の様子にふと気づいたキイは、彼女がぷるぷると震えているのを、恐怖からと思って険しく眉をひそめた。
「大丈夫か?お嬢ちゃん」
労わるようなキイの声に、イェンランはぼうっとしてしまう。
それがキイには恐怖のあまり声が出ないと目に映り、そう判断した。
いや、もう、女扱いに慣れているはずの天下の【宵の流星】も、乙女心にはいささか疎いようである。

キイは苛つくような重い溜息を吐くと、鋭い目で室内で戦い始めた男達を睨みつける。
ちょうどその時、セツカの制止を払うレツの姿がキイの目に映った。

鬼気迫るレツはそのまま再びアムイに襲いかかり、凶器を振り回した。アムイはそれを受け、自衛を取れども自分から攻撃をしかけない。それにレツが憤ったようだ。
「戦え、暁!この期に及んで逃げるんじゃない!四年前同様、お前はまたしても逃げるつもりか!!」
その言葉にセツカがはっとする。「何を……」
アムイは冷静にその言葉を受け止める。事実、アムイは逃げた。あの四年前、いくらロータスの願いだったとはいえ、彼女が亡くなった今、それは言い訳にしか過ぎない。だがそれ以上にアムイにはレツに伝えなければならないことがある。逃げるなど、今はそのような気持ちはない。
「違う、レツ=カルアツヤ!俺はお前と話がしたい。いや話したいことがある。だから──レツっ!」
「話すことなど何もない、暁。俺はお前の命をロータスの元へと送りたいだけだ」
「!」
レツの燻るような狂気の眼差しに一瞬悲哀が揺れて消えた。その言葉にセツカの慄くような声が割って入る。
「レツ……レツ!何てことを……。この方がどういう方か」
「知っている」
きっぱりとセツカの言葉を遮ったレツの口角がゆっくりと上がる。セツカはその彼の様子に一瞬言葉を失った。
「さっきお前たちの話を聞いていた」
「ならその重要性はお前だってわかっているはず……」
「それが何だ?」
有無を言わせないほどの硬質な声。セツカの瞳に絶望の色が浮かぶ。
「神王の血筋だからどうなのだ?こいつはロータスの慈悲につけこんで生きながらえてきた。……この男の命は彼女のものだ。だから俺は……」
ガキン、と金属の音が交差する。「お前を許すわけにはいかない」

再び激しい攻防が繰り広げられた。アムイはレツの剣をかわし、何とか会話しようと試みる。セツカもアムイを守ろうと暴走始めるレツに食らいつく。
それを少し離れたところでじっと見守る形のガラムとシータ。

ガシャン、と宿の装飾品が割れ、その音にイェンランが無意識のうちにびくっと身体を竦める。
その様子を間近で感じ取ったキイの目が吊り上がる。
憤怒が頂点に達したようだ。

「いい加減にしろ!」

まるで地鳴りを起こすかのような怒声。

はっとしたのはアムイを守ろうとレツに食らいついているセツカだ。
怒鳴ったにも関わらず、まだ剣を交えている二人に、まるで地獄の魔王のような形相で厳かにキイは言い放った。

「おい、出て行け!ここに迷惑かけんじゃねぇ。争いは外でやれ」
「宵の君!」
セツカはぎょっとした。てっきりこの争いを止めてくれるものと思っていたのに、彼はただ出ていけ、と。
つまり喧嘩は外でやれ、ということだ。
セツカは信じられないような目でキイを見た。だが【宵の流星】がこの事態を止めるつもりがないことを彼の表情でセツカは悟った。


「出よう、外に。心配しなくても俺は逃げるつもりもない」

キイの言葉を受けて、アムイは静かにレツの目を見つめながら言った。もちろん、レツの剣を受け止めて。

憎悪の表情でアムイを睨んでいたレツは、しばらくして「出ろ」とぼそりというと、急に身をひるがえして玄関の扉から、そのまま闇夜に姿を消した。

「暁の君……」
不安そうなセツカに、アムイは片手を軽く上げると、意を決したようにレツの後に続いた。
「宵の君!よろしいのですか?暁の君は……」
珍しく慌てているセツカに、キイは気難しい顔でこう言った。
「心配しなくていい。俺はアムイを信じている。
ただ、真実を明かす人間として、君はこの戦いを見守って欲しい。
ただし、手出し無用。
どうか……あの狂気に走っている男に、真実を伝えてやってくれ」
はっとしてセツカは何か言おうと口を開いた。だが、それを遮るようにキイは確信めいた言葉を続けた。

「もう一人、真実を必要としている人間と共に、な」


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2013年2月 1日 (金)

結局のろのろしております……

現在、#185執筆中です。
昨日の時点で結局あがらず、こうして日付が変わってしまったのでお詫びも兼ねて近況報告です……

宣言した割には1月中ほとんど前に進めませんでした……。

2月には早く本題に戻り、3~4月までには光輪の章を終わらせたいです……。

何故にこんなに苦しんでいるかというと、今書いているユナのお話が(自分の中での)山場のひとつで、思うようにかけるかどうかの瀬戸際だからです。
後半になればなるほど、己の未熟さに苦しまなければならないと……。

これは言いわけですが(スミマセン)


それに輪をかけましてパソコンのメンテが近日中にあるために、数日ネットから遠ざからなければならないことをお知らせします……(ううう)
メンテの中にはOSのバージョンアップもあって、それが終わればWindows8に我が子が生まれ変わると。
もうしばらくXPちゃんでいてもよかったのですが、我が家のパソコンの主治医(笑)である義弟の提案で、ついでにやることになりました……。

あぐあぐ。

ということで、その間に少しでも話をストックしようと思います。

昨今、携帯小説というものが出てきて、携帯で小説を書くのが多くなりましたが、どうも自分は携帯で文字打ちが苦手。というかのろい。メールに不慣れな親に頼まれて代わりに打つのでさえいらつくというのに、長文なんてさすがに無理。
ノートも持っていないので、スキマ時間に書く事も容易でない環境です。
つまり自宅で夜中、デスクトップの前でキーボードをパチパチとひたすら打っている。
それでも数行書くのに結構な時間かかっているなー、という。

活字世界をお留守にしていた報いが今頃出ております。

執筆しながら、絵で表現したほうが(画力があればという前提で)楽だよ、楽なんだけどなこの場面っっ!(自分比)っと悪態つきつつ、奮闘しております。
活字世界での表現力のなさが、己の首を締めています。

ということで漫画よりも小説を読んで頭を活字世界にシフトしようとしているここ最近。

今こうしてつぶやきなんぞ結構書いていますが、昔はこのくらいの文章すら書けなかった(思い浮かばなかった)時と比べ、リハビリはかなり進んでいるように思うのですが、やはり物語を紡ぐとなるとかなり厳しいですねぇ…。
これではいかん、と隙間で勉強中。

子供の頃に図書館通いしていた頃を思い出して。
(自分の持論なのですが、国語の成績をあげたかったらひたすら本を沢山読め、と思ってます。それだけで国語力をあげていた自分が言うので、少しはあたっているかな、と。
結局、画像・映像世界に傾倒していったため、活字に触れるのがおろそかになり……今に至ります。後悔)

lこんな状態なので、今ちまちまと書いている、別サイトに投稿する部分もなかなか進みません(自嘲)
こちらの方はゆっくりと時間かけようとも思っていますが…(なにせ18Rバージョンなので、ごにょごにょ…)


頭では番外編もーと喚いてますが、大事なのは本作で、これを構想どおり最後まで書かなくてはなりません。
最終章までたどり着けますでしょうか。
いや、たどり着かないと

2月は1月以上ピッチを上げていきます。

まだしばらくお付き合いくださると嬉しいです。


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