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2013年8月

2013年8月19日 (月)

残暑お見舞い申し上げます

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暑いですねーー。
更新がまたまた遅れて申し訳ありません。

実は自分、職業柄、(一般の)お盆休みが一番忙しい時でして(汗)やっと解放されているところです。

その間、手は仕事、頭の半分は創作のことばかり思考してて、早くキーボードに触れたくて仕方ありませんでした。

その前にちょっと家族(特に旦那)ともめまして、現在部屋の大掃除中……。自業自得とはいえ、普段からのお掃除はしないとダメですよ……くぅぅ……(T^T)

ということで実はその掃除の途中で(コラ、ちゃんとやれ)こんなん書いてます……。

本当はなるべくペースを早めて更新したいところなのですが、ここに来て想定していた内容がまた膨れてしまい。
…………また調整してます(頭の中で)

環境は前に比べて(パソコンのある部屋で家族全員寝ているということもあり)良くないですが(苦笑・集中できない)秋口までにはかなり先に進めようと思っております。

◆◆◆◆◆


それからそれから。

ワンクリックにご協力いただきましてありがとうございました!

8月19日現在、6人の方にクリックしていただきました。
ううう、これだけの方が付き合ってくださってると知って、感無量です。
こんなに長くて、ともすれば初期からの方なんて足かけ3年もお付き合いいただいているのですから。
見捨てられてないと思って嬉しい反面、完結まで再び気を引き締めてます。

……まぁ、今年はなるべく作品を書いたり、発表したりを目指しているわけなのですが、他作品になかなか移行できず、苦しんでばかりです(案だけはある)。それ以上にとにかくこの処女作を何とか最後まで書かないと、と気合入れてます。
その自分を追い込むために取ったともいえる、小説サイトへの投稿。
この世界を知っただけでも、自分にとって目の前を開かされた思いがします。

……何もわからないで書き始めた頃に比べ、自分が本当に書くことに対して無知だったのが明白のもとに晒されてしまうことになりましたが(苦笑…)、そんな自分の作品に読み手さんがついてくれたことも信じられない思いで現在に至りますが(あはは)、こうして自分の書いたものを発表できる場があることはとても幸せなことだと思います。

……現在18R版はお休みしておりますが、お陰さまでこんなジャンルがよくわからない物語に、お気に入りとして登録してくださってる方が13名も。……本当に頭下がります……。

この物語については、本当に自分が今書きたいもの(これを巷では自己満足という)を思うままに綴っているものなので、読んでくださる方がいるとは思っていない作品でした。だから本当に嬉しい。
最後まで、書きたいことだけご都合主義なところもあるかもしれない作品ですが、このまま突っ走らせてもらおうかと思います(^_^;)

この話を終わらせた時点で、ココログを終了し、別サイトに移行するかを考えたいと思います。
とはいえ、他に完成させた小説があるわけではないので、しばらくはブログ形式でいくでしょうけど……。

しばらくはここと、【小説家になろう】【ムーンライト】での執筆を考えてます。
余裕があれば【E★エブリスタ】で作品の発表も考えてます(こちらは恋愛小説専門と考えてますが)。
とにかくまずはここの完成ですよね……。もちろん、続編も考えてます。ただ、続編は今よりもっと18R色が強くなりそうなので、そこのところも考えていきたいと思っています。


長々と、つぶやきにお付き合いいただき、ありがとうございます。
やっと執筆する時間が取れそうなので、いましばらく次回をお待ちいただければ、と思います。
いつも勝手ばかりで申し訳ありません。

まだまだ暑さは続きますが、お体ご自愛くださいませ。


         kayan(此花かやん) 拝


 Himawari


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2013年8月 4日 (日)

暁の明星 宵の流星 #192(本編再開&ご協力お願いワン・クリック回)

やっと再開です。
ご訪問ありがとうございます。今回は最後までお付き合いくださいませ。
最後に常連様に簡単なお願いがございます。どうかよろしくお願いします。
Tuki★闇夜(月)★


◆◆#192◆◆◆


冷たい雨が夕方から降り続けていた。
北の国はすでに冬将軍が国を凱旋し、夜中の冷え込みもかなり辛くなっている。

男だけの流浪の民ゼムカの王だった男は、閑散としたある酒場の上階で自分の異母弟と会っていた。それも人目につかず、ひっそりと。

ここは北の国でも一番大きい港町・水甲(すいこう)がある、北の国の首都の次に大きい都・ウーエンの繁華街だ。
この副都市ともいえるウーエンは、北の王ミンガンの腹違いの弟が領主を務めている。何しろ彼の母親が身分の高いものであったなら、ミンガン王と王位を争うほどの人物と言われている。噂に違わず彼の才腕で、貧しいと言われるこの国一番の活気を誇っていた。王宮のある中央都と匹敵するほどの規模だ。

その繁華街の片隅で、ひそりとザイゼムはここ数日滞在していた。
「お前と最後に会ったのも、雨だったな」
無精髭が伸びた顎をざらりと自らの片手で撫でると、ザイゼムは水滴の流れる窓から真っ暗な外を眺めた。雨のせいで街を彩る灯りが滲んでいるかのように心許ない光を放っている。そのぼんやりとした灯りはまるでザイゼムを憐れんでいるように映った。いや、なかなか欲している相手の行方が掴めない苛立ちのせいでそう思うのかもしれない。
それ以上に突然起こった事態は、ザイゼムの眉間に多くの皺を作らせた。

「悪かったな、こんな大変は所に来てもらうとは」
「いいえ。戒厳令が発動しているとはいえ、まだ全てを軍で占拠されているわけではありませんから。……それに各国を渡り移動する我々が進入できない国はありません。──まぁ、この先の水甲の港は完全占拠で、無闇に出歩けないそうですが」
現在のゼムカ王・メガンは肩を竦めて自分の尊敬する兄を見やった。
まるで流れ者のような風情が、王であったときよりもこの男の野性味を一層際立たせ、精悍さを嫌というほどに上げている。
18人の兄弟の中で常に頂点にいて、別格だった長兄。誰もが彼にひれ伏し、その寵愛と信頼を熱望せずには要られないほどの男。メガンはひそかに嘆息した。
そんな彼が自分から欲して手に入れられないものなどあるはずなかった。──男も女も彼の魅力の前には成す術がなかったのに。たった一人の男がそれを軽々と覆してしまうなんて。
目の前の男は、まるで逃げた女房に追い縋る亭主のようだ。いや、逃げられた愛猫を必死に探し回っている飼い主か。そんなじりじりと焦燥とした黒い空気が、珍しくこの男から漂ってくる。

(恐るべし宵の流星)

心中複雑な思いで呟くメガンだが、カリスマ性のある男の、こういう人間臭い所が垣間見えるのは嫌じゃない。かえって、ここまでこの男を狂わした人物を是非見たい、と彼は思った。そう、見るだけ……。
メガンは自分が同性愛者と知っている兄に、彼と会っていらぬ攻撃を受けたくないのだ。あれだけ他所の目から彼を隠し通してきたことから、彼の執着と思いは半端なものではないとわかるから尚更に。──特に自分の娘にすら紹介しないところがこの男の余裕のなさを感じさせる。
何故なら、ザイゼムの恋焦がれている彼というのは無類の女好きで、男を全く受け入れられない性質らしいのだ。だからこそ自分と同様に魅力的だと認めているその自慢の娘を、女好きである相手に易々と会わせられないでいるようだ。つまり、ザイゼムは自分が同性であるという事実に分が悪いと悟りきっている。最初は己の魅力で相手を落とすつもり満々だったかもしれない。だが、彼が全くもって男に反応しないのを知って、珍しく危機感を持ったのだ。

ならばなるべく危険分子は近寄らせない……。
無条件で女というだけでなびかれては困る。それがいくら可愛い一人娘でも。

久方ぶりに会った兄の顔に、そんな気持ちがありありと表れているのを、メガンは信じられない思いで眺めていた。だが、それを今の兄に知られるような無謀な真似はしたくない。
彼は目の前にいる兄に知られないよう、そっと息を吐く。

「とにかく、何の収穫もなかったわけか。……他の奴らには」
ザイゼムの嘲るような声に、メガンははっとして顔を上げた。
「しかも結局、お目当ての最高大天司長殿すら余計な事は一言もなかったわけだ」
続けて言いながら、彼はニヤリと意地の悪い笑顔を見せると、窓際を離れメガンの目の前の長椅子にどかっと腰を下ろした。
「……ええ。“今は時期ではない”とはっきりと。しかも意味深な言葉を残されて、各国の者は呆然としていました」
「なぁるほどなぁ」
クックと面白そうに笑う自分の兄に、メガンは好奇心を隠す事はできなかった。
「兄上。こうしてわざわざ五大会議の詳細を報告に来たのです。今ゼムカを背負う自分にも、兄上が掴んでいるというセドの情報を教えて下さいませんか?──あの時の感じでは、セドの情報の一番深いところに手があるのは、多分南の帝王と……兄上のような気がしてならないのですよ。一体何を知っているのです?【宵の流星】には……他にも知られていない真実があるのでは……」
「ま、一番の真実に近い所にいるのは、最高大天司長殿だろうけどな」
ザイゼムは苦笑した。メガンの話だと、あの天空飛来大聖堂の最高位は。完全に真実を闇に葬ろうとしているわけではないらしい。多分同じく真実に近しい存在だったのは、キイの養い親である聖天風来寺の前の最高位であった竜虎(りゅうこ)と思われるが、もうすでに彼はこの世にはいない。
ということは、この世で真実に一番近いただ一人──が、“時が来れば全てが明るみになる“と公言したのも同じだ。

セド王国の、しかも神王の直系の生き残りが公になった衝撃は東を中心に全土に広がる勢いだった。それに慌てて各国要人が集い、中央国で緊急の会議を開いたというのは、北の果てにいたザイゼムの耳にも届いていた。しかもの直後に北の国の内乱。迂闊に動けなくなったザイゼムは、上層の情報を得ようとこうして内密にメガンを呼び寄せたのだ。

しばし物思いにふけると、ザイゼムはゆっくりとメガンに口を開いた。今まで自分が知り得た事実を彼に話して聞かせる。その事実を聞いているメガンの表情も、徐々に驚きに満ちたものになる。
その弟の顔を眺めながら、ザイゼムは沈鬱な気持ちになった。

大きな、大きな天の計画──。

そんな思いが突然沸き起こり、知らずに支配されていく。
滅んだセドの話を整理すればするほど、これは人間が簡単に動かせるような流れでないという感覚が強くなる。

その渦中にキイがいる。自分が心から欲した唯一の人間が──。

ザイゼムは自分に問いかける。己が手にできない宝玉だからこうまでして執拗に追いかけるのだろうか、と。
今まで、願って、狙って、手にできないものなどなかった。だが、キイと彼を取り巻くものを調べれば調べるほど、自分の手に余る気がして焦燥が強くなる。──あの、元南の宰相であったティアンの優越を含んだ眼差しで見下ろされたあの時と同様に。

《最近では“【宵の流星】手にする者、大陸を制す”と噂が出回っているが、皆はまだ詳しい事は知らぬ。
あれを制し、支配するには、普通の人間では到底無理なのだ。
高度な気術を操れる者以外、あれは手に余る。…気術を修得されておらぬ貴公が、宵に何してやれるというのだ。
あれを手に入れただけでは、大陸を制する事はできぬ。名実共に、身も心も、宵を支配する相手が必要なのだ!》

前にティアンが言ってのけたあの言葉は、ザイゼムを唸らせるには充分だった。

まさかキイ自身が神の宝とは思っていなかったから──。

そう思ってザイゼムは心の中でふっと意地悪く笑った。その皮肉な事実に。
彼を手に入れる……それはすなわち神の力を手に入れると同等である。しかもその手中を許される者はただの人間では難しいとくる。キイを手に入れるためには彼自身だけでなく、彼に鎮まる“神の気”も御する逸材でなければならないというのだから。

《ザイゼム王は…どれだけ宵の事を知っておられる?…私はあの方が生まれたときから知っている…》

あの時のティアンの高慢で憎たらしい態度。キイに相応しいのはさも自分だけだという……。思い出しても苦々しい。だが、そんなことはもういい。自分が欲しいのは、キイの持つ力ではないのだから。


あれだけ神の秘宝に胸を躍らせ、その謎を解く事に快感を覚えていた自分が、いつしかその宝を手にしたいと思い始め、調査の過程でキイの存在を知った。その本人を目の当たりにするまで、本当に単純に考えていただけだった。セドの王子を懐柔し、神の秘宝のありかを問いただし、手にする。そう面白がって楽しんでいただけだったはず……、なのに。
今思えば、その力を持って大陸を制するのが最終目的ではなかったのに気がついた。自分はそれほど権力や支配に執着などしていない。ただ、心の思うがまま、自由に、楽しく、わくわくと過ごせばそれでよかったのだ。
──だから、キイが神の力を持ち、その力をもって世界を支配しようという気持ちに、ザイゼムはなかなかなれないでいる。そんな力よりも彼自身が傍にいてくれるのなら……何もいらない。それよりも彼をそんな奴らから守りたいとさえ思う。──案外ロマンチストで乙女思考な所もあったもんだ、と自分に呆れているが。

もうすでにザイゼムの中では、キイは野望の対象ではなくなっていた。

それに気付いたからこそ、王位をこの目の前の弟に譲ったのだ。


+ + +


「それは……まことですか?兄上」
呆然とするメガンに、ザイゼムは乾いた笑いを向ける。
「ああ、キイの持つ秘宝の真相は、悔しいがあのティアンにほのめかされて知ったものだがな。それを考えると真実に近い所を握る人間が、ここにもいたという感じか。……あのティアンという男、南と決別して自分で組織を持って宵を追っているらしい。……あの言い草では一番古くからこの事実を知っていたという事で……いや」
突如としてザイゼムは顎に手をやりながら顔を上げた。
「……他にもいたぞ、当時の真相を握っている人間が」

ザイゼムは思い出した。3年前、キイを追い詰める結果となった情報の元、そう、あの例の王家の石板を持って逃亡した元大聖堂関係者……、そして今は大聖堂直々の指名手配の罪人……である男の事を。
奴は今、どうしているのだろう。あの後、キイがああいう状態になってしまったからそのままになっていたが、久しぶりに東に探りを入れたら、もうすでにその男の影も形もなくなっていた。

男は確か【銀翼】と名乗っていたと思う。

キイと3年前に対峙した時、実際にザイゼムが最新に手にした情報は、キイ自身の驚愕の生まれだけだった。
実は石板の名簿だけでは得られない情報を、情報提供した人間が匿っているという元神官であるその例の罪人の男から直接訊いたものだ。その男は本当に神官を務めていた男とは思えないほど、淫靡で廃れた感じの美貌を持つ中年の男だった。見るからに一癖も二癖もある男の口から語られた……名簿の真実。
その内容がありありと記憶に甦る。


『ほら、父親であるセド第五王子で元神王太子の相手の名を見てみろ。上手く誤魔化しているが、削って本名(ほんな)を消しているのがわかるだろう? これはすなわち、誰かがこの最後の王子の生母が世間に知られたら不味いからという証拠さ。
……リュセル…という名は嘘ではないが、これはセカンドネームだな。教えてやろうか? 相手の女の本当の名を。聞いたら絶対驚く』
そう退廃的に笑う男に当時背筋がゾクリとしたのをやけに覚えている。不気味なほどに目だけは笑っていない──年齢から来る男の凄まじい色気。……女ならば誰もがこの男に落ち、溺れてしまうであろうと簡単に想像できるほどの……淫靡な風情。白髪混じりの波打つ黒髪と、整った顔立ちに深く刻まれる皺が年齢を感じさせても、この男にはマイナスにもならない。
──堕天……。仮にも神官まで務めていたこの男は、神も天も裏切り、魔に寝返った恐ろしい堕天司(だてんし)なのだ。
ザイゼムは本能で、深く関わりたくないと思ったくらいだ。

彼は意気揚々としてこう語った。

『私は何でも知っている。──何年も前に起こった大聖堂とセド王国の確執も、大聖堂が怒り狂った理由わけも、──あの下衆なセドナダ王家がやらかして天から奪ったという神の宝の正体も』
男はザイゼムの出す報酬にちらりと目を走らせると、『これじゃぁ、足りませんね』と、この大陸で十年くらいは遊んで暮らせるほどの金額を鼻で笑った。
『それだけ、……いや、世間を凌駕させるほどの機密中の機密なんですよ。……だから大聖堂はセドが滅亡した時点で全てを隠蔽した。よく言うじゃないですか、死人に口なし…。はは、この場合、人ではなく国ですがね』
『……だから情報を全て出せない、というのか』
自分の苦虫を潰したような表情(かお)に男は楽しそうに笑った。
『もちろん。──これは私の身を助ける切り札でもあるわけだからね……簡単には教えられないなぁ。あ、拷問とかして無理矢理聞こうと思っても無駄だよ。意にそぐわないのなら死んだ方がましだと思うので。ふふ。その時は大陸の運命を握る重要機密がぱぁになるわけだ。あっはっは』

結局ザイゼムはこの食えない男からこの情報しか引き出せなかった。

『……このキイとかいう王子の母親の本名(ほんな)は…………ラスターベル・リュセル=ルシファマール。【光】の異名を持つ先代の姫巫女であり、……現、最高大天空代理司長である、天弓(てんきゅう)という異名の神官、サーディオ・ルイ=ルシファマールの実の姉上だよ』

その事実を聞いたザイゼムといえば、ぼんやりとした確信に浸っていて、驚き以上に普通に受け止めた自分が不思議だった。

言われてみたらその神官にキイはどことなく似ている。いや、血縁があると聞けば、納得するほどである。……天空に祈りを捧げる神事を中心に取り仕切る為、滅多に人の前には現れないのであるが、少年の頃、父王に連れられてオーン聖誕祭に出席した時、まだ聖戦士の長である聖剛大天司(せいごうだいてんし)の役目をしていた彼を見かけた事がある。記憶の中のサーディオ天弓天司は髪と目の色こそ違え、面差しが確かにキイと通じるものがあって本当に麗しかった。幼い頃から神童と謳われ、まるで聖堂の絵から抜け出たような容姿がもてはやされていたのを思い出す。
キイが背徳と同時に醸し出す聖なる気配はここから来るのか、と腑に落ちたものだ。


+ + +

「私が宵について知っているのはここまでだ。──神の力に関して言えば、あのティアンが一番詳しいだろう。皆はまだ、神王の直系が生き残っているという事実に翻弄されているが、本当の驚くべき話はもっと深い。……これが本当であれば、宵は神の力を欲したセドナダ王家が無理矢理作らせた王子といえる。女神の血を引く神王の王子と神の申し子である巫女から生まれ、絶対神が持つ神気を持つ初めての人間……。この宵こそが神という存在そのものに成り得ると……だからこそ、大聖堂は封印したのではないか?この事実を。時期を見ていると言うのはこの事ではないか?お前、どう思う」

メガンは言葉を失っていた。どう答えたらよいかわからないほど、自失している。
「あ……いや、その……」
まさか【宵の流星】自身にそのような秘密が隠されているとは思わなかった。にわかには信じられ内容でもある。……何せ人間自体に神の力が宿っているというのだ。
「その宵の“気”を、我々は知らずして封印を施してしまった。──そしてその後、あいつはその真実に触れそうになった我々から逃れるように己自身を封印し、そのせいであいつの神なる“気”を圧縮してしまう事となってしまった」
自嘲気味に言うザイゼムに、メガンは眉根を寄せた。嫌な予感がする。
「まさか……その宵が持つ神の“気”が、セド王国を半壊した…のでは…」
「多分」
断言するザイゼムの表情も険しい。
「とすれば、もし彼の“気”が再び出る事になったとしたら、一体どうなるのです……?」
「……私もあれから色々と気術について調べたよ。その力を思いのままに使おうとティアンの奴は目論んでいる。そうやって世界を我が物にしようとしている……。だから奴にだけは宵を渡してはならないのだ」
そう言いながら、メガンから南の大帝の様子を聞いていたザイゼムは、彼もその事を掴んだのではないかという気がしてならなかった。
「本当の意味での宵の争奪戦……。女神の子孫と巫女の血を引く……次期神王ともいえる神の力を持つ王子……」
「な?それを思うと末恐ろしいだろう?……宵の存在が。しかも万人をも惹き付けるあの容貌。その上中身は意外と高潔で大胆だ。……あれ自身がこの大陸を制する王となったとしてもおかしくない逸材だ。なのにその宵を御し、その力を使って大陸の王と君臨しようとする愚かな人間が憚らずいる以上、それを阻止しなければならん」
「兄上……」
ザイゼムのいつにない不安げで暗い表情に、メガンは目を逸らして組んだ両手に力を入れた。
兄の覚悟は王位を譲られた時に嫌というほどわかっていた。……それほど【宵の流星】に対する想いが本物だと思っていたのだが、それだけではなかった。裏でこんな大きな事態が隠されているとは……。

「宵は自分の“気”の封印を解くため、東に戻ろうとしているはずだ」
その断言に、メガンははっと顔を上げた。兄の頭の中には宵の事しかない。わかりきっているのにメガンは先程から落ち着かないでいた。震える手に力を込めるとゆっくりとはずし、それを両膝上に置く。
「そのためには……国境を越えるか、海に出るか……」
「兄上」
沈痛な面持ちで、メガンはザイゼムの言葉を遮った。
「ん?どうした」
「……ルランにお会いしましたか?」

本当はこの事を言うかどうか、メガンは寸前まで迷っていたのだ。
「ルラン?何故ルランが……」と、ここまで言ってザイゼムははっとした。
「まさか、あいつ」
顔色の変わったザイゼムに、メガンは目を逸らした。
「私の落ち度です。……兄上がお出になられた後すぐに、ルランの姿が消えました」
そう、メガンに簡単な文(ふみ)を残しただけで。
「……馬鹿な…」と呟いたきり、ザイゼムはそのまま黙りこくった。
兄の胸の中ではどんな思いが駆け巡っているのだろう。だが、それを知りたくなくて、メガンはそのまま言葉を発した。
「もし、ルランが兄上の前に現れたのなら、どうか私に教えて下さい。そして伝えて欲しいのです、彼に。──私はまだ諦めていない……と」

雨が益々酷くなる。窓ガラスにぶつかる飛沫の音が、メガンの心を乱れさす。
だがそれ以上に、目の前にいる兄の心は大きな嵐に翻弄されているだろう。
神の力を持つ愛しい男と自分を慕う無垢な少年の間で。


◇◇

ゼムカの男達が密会していたその頃、【宵の流星】を執拗に追い求めるもう一人の男もまた、激しい焦燥の渦の中にいた。

ティアンはちょうど大きな港・水甲の近くにある大きな宿に滞在していた。
そして彼の近くには、北の国第一王子ミャオロゥの使者だという中央軍の准将がいた。

激しい雨の中、わざわざティアンと密談する為に──。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・#192・・・・・・・・


◆◆◆お願いごと◆◆◆◆毎回お越しくださる方はできるだけお目をお通しください。

本当に久しぶりとなってしまいました!
これからしばらくこちらに集中するつもりです。(まだまだ試練は続く)

夏も佳境となり、ムシムシする毎日が続きますが、どうかお身体ご自愛ください。

ところで(汗)前々から書いてましたように、ここで少し統計を取らせていただきたいと思います。
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