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2013年12月

2013年12月22日 (日)

暁の明星 宵の流星 #195

ああ思いっきり殴りたい。


などと思ったとしても、王族にそのような振る舞いをすれば、己の命に係わる。悔しいがそれが常識だ。 


亡くなった母親から、王族に血を分けた兄がいるという事は幼い頃から教えられていた。
何せ、村一番の美女と謳われた母が王に見初められ、まるで奪われるように王都に連れていかれ王子を産んだのは誰もが知るところだ。結局母は王妃に第一王子が生まれたため、泣く泣く村に返された。自分の産んだ子を王宮に取り上げられて。
そして母を心底愛していただろう王は、彼女の行く末を心配し、彼女の未来を守るために村一番の土地持ちでもある地主の男に嫁がせた。──それがシュンメイの父親であるが、温厚で真面目な男は本当に母を大事にしてくれた。母親もそんな父に次第に心を開き、心の傷を癒してくれる彼を慕うようになるのは時間の問題だった。夫婦仲はとてもよく、間もなく二人に娘が生まれると益々絆が深まった。
シュンメイは本当に穏やかで愛の溢れる家庭に育ったのだ。
ただ、亡くなるまで常に母は王宮にいる自分の息子を気にかけていた。王都の噂はその隣にある自分の村にもすぐ届く。 
……そう、不遇な第二王子の様子も…。
自分達の家庭が幸せであればあるほど、病気がちで王妃側に疎まれて暮らしている息子を心配しない母親がいるだろうか?
それでも二度と会うな、と王妃側に釘を刺されていた手前、母はその思いを懸命に押し隠していた。
ただ、自分の娘にだけはポロリと本音を漏らすことはあったが。

シュンメイも体の弱い半分血の繋がった兄に会ってみたいという気持ちがあった。
だから王妃が亡くなって間もなく、王自身から異父兄(あに)に会って欲しいと願われたら遠慮する理由はないだろう。シュンメイは喜びと共に堂々と半分血の繋がった異父兄に会いに行ったのだ。

……それが。何でこんな面倒くさいことに。

やっと会えた異父兄マオハンは、母の面差しが色濃くあった。といういことは、母似であると評判のシュンメイと彼は誰が見ても血の繋がりがあるのは一目瞭然である。
ただ兄妹といってもさすがマオハンは王族として育てられたせいか、物腰にも気品があって気高かった。そして聡明で心優しい理想の王子様そのもので、シュンメイは兄を誇らしく思った。
彼の欠けていたものは健康だけであって、体が弱いため日の半分は床に就いてはいたが、無理をしなければ普通に出歩くことはできていた。その限られている時間で、彼は極秘で港に軍事施設を作ろうとしていたようだ。

そして王の計らいでシュンメイは王宮に優遇されるような形で出入りを許され、ともすれば孤立しがちなマオハンの話し相手としてその日から通うようになったのだった。
そんな彼女に、平民ではあるが王宮から特別にマオハン直々の侍女にならないか、と申し出があった。
北の国の女性減少は中央都にまで徐々におよび、なるべく王宮に回している女手が、ここ昨今は希薄になっていた。昔のように王族に係わる侍女は貴族の娘…という時代ではなくなった。何せ貴族にも娘が少ない。その補充は王家にとっても悩むところであったのだ。そこで平民にも範囲を広げた。ただ貴族の娘と違うところは、王宮に入るにはかなりの審査と条件があるということだ。素行、知性(可能性)、従順さ、ある一定の実家の財力、そして容姿だ。
それら全て、シュンメイは条件を満たしていた。しかも王族に関わりのある娘。そういう話が彼女の家に正式にくるのは至極当たり前であった。
シュンメイは短時間ではあるがすでにマオハンと打ち解け、尊敬までしている異父兄の傍に居られる喜びと、大きな農場の一人娘であるという事で、侍女としての教育と経験が良縁を呼ぶのでは、という父親の希望で近々正式に王宮に入ることになっていた……のだ。

マオハンに会いに行く途中で、第一王子ミャオロゥとばったり遭遇しなければ。

いや、今考えるとその出会いも仕組まれたものだったかもしれないが。

とにかく彼女は出会った瞬間からミャオロゥ王子の標的になったのだ。
何度待ち伏せされ、何度言い寄られ、隙あれば何度個室に連れ込まれそうになったことか。
まだ当時初心な少女だったシュンメイは、言い寄られていることに恥ずかしさと嫌悪を感じて、誰にも相談できなかった。ただ自分が王子よりも少しばかり背が高くて、巷の女の子よりも力が強く、護身のために父親から体術をある程度教わっていた、という事実が、彼女に変な自信を持たせてしまった。王子の魔の手から逃げられる、という……。
だから優しくて王宮での微妙な立場である異父兄には絶対に知らせなかった。自分のことで煩わせたくない、これ以上立場を悪くさせたくない、という思いで気丈に振る舞っていた。

だが、そんなのは思慮浅い生娘の考えだったと、今のシュンメイは思う。
あの日、さすがに油断していたのだ。
今まで王宮内でしか接触してこなかったミャオロゥ王子がしびれを切らしたのか、シュンメイがマオハンのために花を庭師から貰おうと園庭に足を運んだところで捕まり、有無を言わさず庭より外れた木々が生い茂る人のいない場所に連れ込まれ、先程の会話となる。

彼女の気分は憤りのため、恐怖というのはなかったが、まさか本気になった男の腕が、こんなにも強いとは思わなかった。がっちりと手首を掴まれ、胸に引き込まれ……といっても相手の方が背が低いので顔と顔を向け合うような体制になっていたが。かえってそれが口づけに容易い距離になってしまったことに、シュンメイは焦った。
思わず抵抗を試みるシュンメイに、色々な下卑た台詞を吐いたあと、ミャオロゥは嬉々として彼女を木陰に押し倒した。声を張り上げようとして、いきなりミャオロゥの口が彼女の唇に押し当てられる。
気持ち悪さとショックで彼女は断固として男の力に抵抗する。だが、安易にミャオロゥの手が自分のスカートの中に忍び込み、太腿を撫で上げられて恐怖が一気になだれ込んできた。
さすがに何人もの女をものにしてきた男の動きである。悪寒に突き動かされたシュンメイは、もう形振り構わず暴れ出した。それによって塞がれた口が外れ、彼女は大きく喚いた。
が、そんなことは慣れているのか、ミャオロゥは馬鹿にしたように笑っただけだった。
「こんな辺鄙な場所に人なんか来ない。ま、お前の声を聞いたとしても、いつものこと、男女のお忍びだろうと野暮なことをする者などいないぞ」
その言い方で、この男がこの場所で何回もこうした淫らな行いをしているということが安易に想像できた。
シュンメイは唇を噛んだ。この男は自分のテリトリーに近づくのを待っていたに違いなかった。何も知らず、警戒すらしないでまんまと引っかかった己自身を呪った。
「これもお前の兄が悪いのだ」
ミャオロゥの言った意味がわからない。
「お前の兄が生まれたせいで母君は嫉妬に狂い、完全に後宮制度や王が愛人を娶る自由を廃止したのだ。表向きは女の減少がどうのとお綺麗な事を言っていたようだが。
だから今独り身の自由な時に好きなことをしても罰は当たるまい?お前も王族と完全なつながりができて名誉なことと思うがよい。私を楽しませればそれ相応にいい思いもさせてやるぞ?」
「離して!そんな名誉、いらない!いい思いなんてない!」
諦めずに暴れるシュンメイに、ミャオォロウは頬を張り倒した。
「うるさい!黙れ!この卑しい女め」

「卑しいのは貴方ではないかな?」

突然、二人の背後から低い、だが凛とした男の声がした。
「なっ、何をっ!?」
カッとして振り仰いだミャオロゥの目が声の主を認めた途端、顔面が蒼白となった。
何事が起ったのかわからないまま茫然としたシュンメイに、その声の主は固まっているミャオロゥを無言のまま彼女の上から引き剥がすと、ゆっくりと手を差し伸べた。
「大丈夫か」
声の主はシュンメイを立ち上がらせると、優しい手つきで赤くなった彼女の頬に触れた。
「こんな美しい肌に、何て酷いことを」
その慈愛溢れる手の温もりよりも、シュンメイは目の前の男の姿に釘付けになっていた。

声の主……男は驚くほど背が高かった。この国で背が高いと言われる自分よりも頭一つ分以上あるのではないだろうか。しかも身体は鍛え上げたように筋骨隆々だ。まるで戦士のような体躯であるが、目の前の顔は、整っていて鼻梁が高く、品のある甘い顔立ちをしている。シュンメイを労わるように見つめるアーモンド形の双眸に光る瞳の色は優しい緑色だった。それが彼の短く刈った薄茶色の髪の毛によく映えていた。

どう見ても、この国の人間ではない。
──では、いったい誰?
ふと彼の肩越しに見るミャオロゥの動揺した姿が映る。
この国の第一王子に、こんな顔をさせる人物って、いったい……。


シュンメイは初めて彼と会ったときを思い出し、思わず口元が綻んだ。
思えば、恥ずかしい出会いだった。
王子に無理やり手籠めにされそうだったところを助けてもらった……のが、縁、なんて。

人生どう転ぶか、本当にわからないものね、とシュンメイはそっと溜息をつく。

* * *

彼女助けてくれたのは、神国オーンの特命大使。

しかも此度、北の王家との縁組のために、相手側の家から視察に来られたと囁かれる、姫君の忠実なる騎士だという。
初め、オーンしかいない“騎士”という存在にシュンメイは戸惑ったが、あの優しい笑顔で「要人を守る護衛官と思っていいですよ」と言われたのを思い出す。ただそれがオーン神国では宗教上、神の命に乗っ取って、主に生涯の忠誠を誓うのだとか。だからどの国よりも浪漫を感じるのだ、と初心なシュンメイはその時思ったものだった。


当時、国を立て直そうと必死だったミンガン王は、神国オーンからの縁談話に目を丸くしていた。
何故、このような安定しない国に?

聞けば相手は神国でも由緒ある貴族の末の姫君。しかも昔から、大聖堂の神官や巫女を輩出していると言われる名家中の名家だった。
ざっと見渡せば、姫君に見合う年頃の高位の人間は数多いるではないか。男はあふれているのだ。もっと条件のいい相手など掃いて捨てるほどいるだろうに。
だが、王家を驚かせたのは申し出以上にその理由だった。

──その理由。
それは末娘の縁談について神託が下ろされたのだという。
北のモウラ国の王家に嫁げ、と。

神国であるオーンの貴族らしい理由と言ってしまえばそうだというような内容。

国家、大陸を見渡す姫巫女の神託は、なかなか個人には下りるものではないが、姫巫女を支える補助の巫女達に、信者のためであれば個人的に神託を下しても許されるという権限を持っている。
特に聖職者を多く出しているルシファマール家は特に専門の巫女がいるくらいだ。
そしてその家の節目などに、神の許しがあれば、その巫女に神託が下りるというのだ。
だいたいはその家の人間の進路に下りることが多いという。
それは長女ラスターベルの巫女入り然り、次男のサーディオの大聖堂入りも、そして他の兄弟の進路も。そしてもちろん末の娘の嫁ぎ先さえも。
敬虔な信徒であるルシファマールの人間は何の疑いもなくその神の言葉に従う。そのような家系なのだ。どんな結果となったとしても、尊い神の言葉は絶対なのであるから。

ただ、“王家に嫁げ”とだけで、誰に嫁げとは明言されていなかったらしい。

だから、姫君の忠実なる騎士が率先して特使を請け負い、彼自身の目で王家を視察しに来たというのだ。そう言えば、とシュンメイは思い出した。
異国の、異教の大使が王宮に滞在しているとこの間兄から聞いたばかりだった。
そのせいで、ここ2-3日、宮廷内にピリピリとした空気が漂っていたのか。

という事は、愚かしい失態を晒したミャオロゥ王子は完全に候補から消えたも同然。シュンメイはほくそ笑んだが、事態はそんな悠長な方向には行っていなかった。かえって女癖の悪さが露見して開き直ったのか、それ以来、第一王子が執拗にシュンメイを追い回すことが多くなった。相手も意地になっていたのだろう。
王命で王宮内に世話になっているシュンメイが勝手に実家に戻れるわけがない。益々激しくなるミャオロゥの魔の手に、救いの手を差し伸べてくれたのは、あのオーンの騎士だった。彼は彼女を見守っているのか、襲われそうになるたびに、どこともなく現れ、さりげなく助けてくれた。困り果てた彼女に異父兄に助けを求めなさいと助言したのは、もう彼の滞在日数が終わる頃だった。
そしてやっとシュンメイは兄に泣きついた。特に最近は巧妙で狡猾な手でくるために、そして守ってくれていた神国の騎士が帰国すると知って、シュンメイは洗いざらい異父兄に今までのことを話した。
マオハンは激怒、ミャオロゥの実の弟ではあるが、自分と密かに懇意にしている異母弟のシャイエイ王子に相談し、シュンメイの身を隠すことにしたのだ。

だが、それもアダとなる。

プライドを傷つけられ、思うようにならないミャオロゥの苛立ちは極限まできていて、どんな手を使っても女をものにすると、柄の悪い男達に協力を仰いでいた。そう、たとえ暴力を使ってまでも、密かにシュンメイをさらい、監禁するために……。

そんな第一王子の悪計を知らないシュンメイは、帰国してしまったオーンの騎士に心を奪われたままだった。寝ても覚めても、彼の優しい翡翠の瞳が思い出される。これが恋だと気づいたのは、彼がいなくなってすぐだった。
今まで牽制してくれていた彼がいなくなったのに、彼のことばかりに思い煩っていて、シュンメイはミャオロゥに対する警戒を怠っていたのかもしれない。それに異父兄が彼女を隠す計画も順調にいっていた。それにまさかこの国の王子がまさかそこまで考えているとは思っていなかった。まかりなりにも一国の王子、だ。
だが、それは甘かったと後にシュンメイは思い知る。


そして事件は起こったのだ。

* * * * *


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2013年12月16日 (月)

暁の明星 宵の流星 #194

お国美人と噂の通り、この屋敷の女主人であるシュンメイ=リアンは北の国でいう美女の条件をほぼ満たしていた。
象牙のようななめらかな肌や、漆黒のクセのない長い髪や、切れ長の涼しげな目元を覆う長い睫だとか。
笑うと目がすっと線のようになって、気持ちよさそうな猫のような印象になるとか。
それだけを見ると、典型的なモウラ(北国)美人だ。
ただその身長だけが、北の国の女性にしては規格外であった。
当たり前だがそれぞれの国では男が女に求めるものが変化する。特に北の国では小柄な女性がよしとされるお国柄である。まぁ、男の平均身長も他の国より低い、という事情もあるのだろうが、とにかく小さくて華奢であるというのが、北の国モウラにおける美人の要素のひとつである。

だが、彼女はそんな事は全く気にならないようで、背の高さを生かすかのごとくピンと背筋を伸ばしている。その潔くも優雅な美しさに気負わされるほどだ。

……そして性格もその姿勢そのものに潔く、まったく物怖じのしない人物であるというのは、ここ数日接してみてわかったことだ。かと言って、男勝りというわけではない。女性としての柔らかさを持ちながら、周囲に流されない意志の強さを感じる。
イェンランにとって理想とする女性の姿がそこにあった。


「王家の……恥をお話しするのもためらいますが」
と、言いながらも皆のお茶を淹れる彼女の表情は柔らかい。
「ほんっと、噂とはいい加減なものでしょう?でも、そのお蔭でこうして真実を隠してしまえる」
「ということは、──シュンメイさんは……」
イェンランの問いに彼女はくすりと笑ってこう答えた。
「ご存じのとおり、私はただの第二王子の異父妹であって、第三王子の愛人ではありません、残念ですが。……ま、あの第一王子に言い寄られたのは確かですけど、周りが助けてくれたから、今こうしていられるんです」

彼女の屋敷に移動して、すでに三日が経っていた。

北の国で一番大きな港町を持ち、ミンガン王の異母弟であるイアン公の治める領地より数キロ西に下がった小さな村。そこを通って海寄りに行くと、第二王子が志半ばで断念したという軍事港のあるチガンである。
シュンメイはその隠された要塞跡地のすぐ傍に普段は住んでいるらしいが、緊急の要請で近隣村にあるその別荘へと移り、アムイ達を招き入れてくれたのだった。
間接的に指示してきたのは国教である北星天寺院の隠居した大僧侶、昂極大法師(こうきょくだいほうし)……つまり昂老人。
そしてそれを直接実行したのが、今はお忍びで来ている西の国ルジャン第四王子リシュオンである。

そのリシュオン王子は、中央都に向かったまま音信不通となった昂老人を捜索に行こうとして止められた。今この状態で西の国の王子が動くのはまずいとキイとアムイの判断だ。
それならば、とシュンメイが「適任がいるからその者に頼んでみる」と、半日姿を見せなかったのがつい先ほどのこと。
今は質素ではあるが居心地の良い居間で全員顔を向き合わせ、彼女の淹れてくれたお茶に一息ついているところだった。

「王都までの距離を考えると、明後日には何かわかると思います。
……それよりも、幽閉されているというシャイエイ王子が心配です。まぁ、実のご兄弟だから、ミャオロゥ王子も酷いことをなさらないと思うのですが……」

心優しく聡明であるが、気の弱さから強く出られないという噂の第三王子…シャイエイは面差しは父王であるミンガンの方に似ている。穏やかなミンガン王をさらに温厚にさせて影を薄くすれば……。いや、それはいくらなんでもシャイエイ王子に失礼であろう。
人が良く、平和主義の王子とて愚かではない。彼は彼なりに王家を思い、国を思っている。だが、どうしても王族としての力が足りない。特に強引で我儘を絵に描いた長兄(ミャオロゥ)に常に抑え込まれている印象が強い。……事実、成人するまではミャオロゥ王子の言いなりと評判だった末の王子である。
20代半ばのいい大人である今でも第一王子に強く出られると萎縮してしまうその第三王子が、初めて脅威である兄に立ち向かったのが、この目の前にいる第二王子の異母妹であるシュンメイとの件である。
実際には色々と複雑な状況が重なり合っていたが、傍から見て二人の王子が一人の平民の女を取り合った事件と思われている。

「まあ、そこのところはかなり真実も混じっているわけですが」

言いにくそうに笑顔を歪める彼女に、その場にいた者は黙り込む。
「自国の王家の醜聞をできるだけ隠したい、そう仰ったのは…シャイエイ様です。
あの方は本当に思慮深く、お優しいお方なのですが、今のモウラ(北の国)を統率し安泰に導くお力がどうしても足りない……。あの方に第一王子のような大きな後ろ盾があればよろしかったでしょうが……残念でなりません」
苦笑しつつ、シュンメイはどこか遠くを見るような眼差しで、その王家の内情をアムイ達に語り始めた。

目の前にいるのは、シャイエイ王子自身と王家を陰ながら見守ってくれている昂極大法師(こうきょくだいほうし)から直接預かった大事な客人だ。もちろん、西の国ルジャンの王子リシュオンまでも出てきて関わっている事も相成って、アイリン姫の乳母だった彼女には、協力を仰ぐために全てアムイやキイの事情は知らされている。
だからこそ複雑な北の王家の内情を説明する必要があった。ある意味、自分達の立場を理解してもらい、この切羽詰まった状況で何ができるかを模索するためにも。

何せシュンメイが今匿っているのは、東の滅んだ王国の王族である。
情報通である自分の夫からの話によると、あの馬鹿王子が南と手を組んで国民を売るような真似をし、セド王国の最後の秘宝などという話に目がくらんでいるというのは前から耳に入っていた。だが、その後にシャイエイ王子直々に自分達に助けを求めてきて、その内容に驚愕したのはつい最近のことだ。

(まさか本当にセド王家の直系が生き残っていたとは)

しかもその王家の人間を狙っているのが、城を乗っ取ったあの馬鹿王子と南の国(リドン)の元宰相だった男。
シュンメイが己の身の危険を顧みず、即答でシャイエイ王子の頼みを受け入れたのは、これ以上ミャオロゥ王子に国をかき回してほしくない、ただそれだけだ。


「ご存じのとおり、私は今は亡き第二王子マオハン=モ・ラウの異父妹(いもうと)です」

そうしてシュンメイは当時の事を語り始めた。


◆ ◇ ◆ 

北の国モウラは代々モ・ラウ家が治めてきた大国である。
王族として長く北を統治してきたモ・ラウ家だが、それを中心に取り巻くように強力な影響力を持つ3つの名門貴族が存在する。

一つは第一王子と第三王子の生母の実家であるシウ・ハクオウ家。
そして国教である北星天寺院の近くを居とする北西のソン・ス家。
最後は現在の王ミンガンの異母弟イアン公が治める港町に近い北東を守る、優秀な自警団を持つオウ・チューン家。

彼らは北の御三家と呼ばれ、王族と共に北の国モウラの統治に影響を少なからず与え続けてきた。
そして王族を守るため三家は協力し合ってきたが、北の国の国勢悪化と共に、そのバランスが徐々に崩れ……ハクオウ家に娘が生まれ、彼女が正妃に納まった時点で徹底打となる。
衰弱しつつあるモ・ラウ家に侵食し、政治の実権を水面下で握ろうとし始めたからである。いや、もうすでに彼らの中では決定事項であったろう。三家の中でどこが正妃を出すかで小競り合ってたのは確かだ。表向きでは友好関係である他の二家も、ハクオウ家同様、裏では虎視眈々と国の実権を狙っているに違いなかった。だが、運命はハクオウ家に微笑んだ。ミンガン王(当時王太子)と年回りの近しい娘が生まれたのだから。高貴な家柄の姫君が正妃となるのは当然である。
思惑通り、ハクオウ家の姫は次代の王妃となり、やっとの思いで跡継ぎも儲けた。
事実、その跡継ぎである第一王子を担ぎ上げて、正妃亡き後も色々と口を出している。
思惑が外れたのは意外なほどに頑ななミンガン王の態度だった。

元々寡黙で感情の起伏のないミンガン王が、心の中で何を考え思うのか、判りにくいことも相成って、ハクオウ家と王との関係は決して良いとは言えるものではなかった。
ただ、今の脆弱な王家を陰ながら支えているという現実が、王としてはハクオウ家を蔑ろにできない事情となっている。
だからといって王は言いなりになるような人間ではなかった。平民の娘と子を作ったり、ずっと王太子も据えず、他国から後添いを儲けたりなど、ハクオウ家としたら煮え湯を飲まされるような日々を突き付けられていた。

……高齢であり、近年体調のよろしくない王をいつか追いやる機会を窺(うかが)っていた彼らに、傀儡である第一王子の拘束は痛いところだった。だが、それが一発逆転の展開となるとは。
王不在に一気に囚われていた王子を救出し、王宮を支配した。そして言葉巧みに利益をチラつかせて中央軍を味方に引き込んだ。
たとえそれがよその人間からの提案だったとしても、このチャンスを逃すわけにはいかなかったのだ。

そのハクオウ家に担がれている第一王子ミャオロゥ。
色々と言われているが、決して無能ではない。さすがに賢王と言われているミンガンの息子である。仕事はできるうちに入るであろう。王宮内で頼りにされているだけの。ただ、そのやり方が狡猾で悪どい。しかもそれを表には出さない。裏で非道な事を平気でやっていたとしても、絶対に自分は正しいと思っているような傲慢な男だ。

それは女に対しても同様で、当時20も後半になろうというのに身を固めずふらふらし、女癖が悪くあちこちに愛人を作っているのも、誰にも憚れることなく恋愛を謳歌しているだけだと開き直っていた。
王族としていつかは正妃を娶わなくてはならないと知っているが、女の数が減ったのと後宮の廃止で、数多の女を所有することが叶わなくなった事が彼にとっては不服だったらしい。
結婚してしまえば愛人を持つことを許されなくなった今の王家に反発するように、自由恋愛を唱えながら好き勝手に女と遊び戯れる。……こんな調子であれば、いくら実の息子であれど不信になるのは仕方ないだろう。

第一王子にしっかりとした名家の女性を娶わせれば落ち着くのではないかと、最初は王達も彼に花嫁を与えようと懸命であったが、結局、第二王子の異父妹であるシュンメイを追い掛け回した件で父王ミンガンの怒りに触れ、当初は第一王子にときた神国オーンの貴族の姫君との縁談が王自身のものとなったのは、周りの誰もが驚いた。
事実、オーンの姫君とミンガン王は親子とも年の差があった。
だがその婚姻が有効になったのは、第一王子の女癖の悪さと、長子なのに王太子に据えられていない事、そして何より姫君を一目見て王自身が年甲斐もなく恋に落ちてしまったからだ。

……当時、自分に宛がわれる筈だった花嫁を見て、そのあまりにもの美しさにミャオロゥ王子が歯噛みして悔しがり、父王に憎悪すら抱いたというのは事実である。
そしてミャオロゥ王子が次第に私腹を肥やし始め、南と手を組み人身売買に手を貸すようになったのはこの頃からだと言われている……。


◆ ◇ ◆ 


その厭らしい手を離してはくれないだろうか。

シュンメイ=リアンが怒りを抑えた目で見下ろしているのは、この国の第一王子だ。残念ながら自分より小指の長さほど背が低い。
それなのに、王族のくせして下卑た笑いを浮かべ、自分の右手首を掴み、もう片方の手でさわさわと右肩を撫で回している。
「お前がマオハンの異父妹(いもうと)か。ほぅ、なかなか豊満で厭らしい身体をしているではないか」

あんたの方が数倍厭らしいわよ。何よその気色悪い手の動きは。

「お戯れを王子様。いくら何でも簡単にただの農民の娘に手をお出しになるべきではありませんわ」
「ほう?お前がそれを言うのか。私の父君なんかその農民に種を撒いてお前の兄をこさえたぞ。父がよくて私がダメとは……どういう了見かな?」
「……」
「お前やマオハンを見て思うよ。父君が手をつけた農民の娘はかなりいい女だったんだろうなぁ、と。
お前はマオハンと血がつながっているだろうが、私とは何のつながりもない。…私も父君がお前の母にしたように王族の種を仕込んでやるぞ?」
そう言いながらミャオロゥは肩に置いていた手をするりとシュンメイの腹部まで下ろす。
「…・っ!」
ぞわ、とした悪寒がシュンメイの背中を駆け上る。
「ここに私の高貴な種が入るんだ。単なる平民にとって、これ程の名誉なこともあるまい?」
そう蔑むように笑うこの国の第一王子に対し、シュンメイの温厚な人柄が崩壊したとして誰も責めることは出来ないであろう。

王様。この王子、一度殴り飛ばしてもいいですか?

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2013年12月14日 (土)

設定・人物紹介(セドの太陽編)

セドの太陽編~設定書~


セド王国(セドラン共和国)
  絶対神の妹神が、兄神が創った大陸に初めて降り立ち、大陸の人間の男と契って、王家を作ったといういわれから、代々続く神王を立ててきたセドナダ王家を中心とする国家。小国でもあるが、そのためにより、東の国で絶対の力を誇っていた。しかし近年はその力も衰え、東も情勢が不安定だった。神の血に固執するが故の、近親婚もされていた一族で、それも原因かと思われる。
国民は穏やかで、優しい人間が多く、肌が白くてきめ細やかな肌、黒い髪に黒い瞳の美形が多い国でもある。


【登場人物】

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アマト=セドナダセドの太陽

セド王家、第五王子。
濃すぎる血を薄めるためにと、前神王が桜花楼、最高級娼婦【夜桜】との間に作った子。母親はもちろんセド人。
父王の低い声と、母親の美貌を受け継ぎ、見目麗しく、また博愛精神と利発さで、国民の人気を絶大なものにし、全てを兼ね備えた“太陽の王子”【セドの太陽】と讃えられた。
だが彼は母が身分のない娼婦だった事から、他の兄弟に疎まれ、嫉妬の対象となっていた。
彼を守ってくれるのは、彼を愛する家臣達であった。
特に護衛のラムウとは子供の頃から一緒で、一番心を許している。
王の素質はあるが、自己犠牲的なほどの優しさが災いして、異母兄弟の策略から、禁忌を犯してしまう事になる。聖職者である二人の女性と禁忌を犯し、それぞれ王子を儲ける。子供達の事を深く愛している。

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ネイチェル月光天司(げっこうてんし)

天空飛来大聖堂(てんくうひらいだいせいどう)の聖職者。月光という異名を大聖堂から頂く。
元は武道家の家柄で、幼い頃から父親に剣を仕込まれていた。その事から、信徒だった母の願いを聞いて、聖職者になったと同時に、少女ながらオーンの最高位、姫巫女(ひめみこ)の直属の護衛を任される。剣の腕は男性並み。大聖堂の聖戦士であるサーディオの剣の師匠も務めた事も。
だが彼女は昔から医術に興味があり、密かに勉強、実践を重ねていた。将来は各国を奉仕で回ろうと考えていた。姫巫女のラスターベルを敬愛し、昔は姉(あね)様、と年上の彼女を慕っていた。
その彼女を穢し、子供を産ませたセドの王子を怒り、責めはすれ、心から憎めない自分と葛藤する。王子に愛を感じていたからだ。
禁忌を犯す事になるであろうその想いを抑えてきたが、最後には自ら神に背き、罪人になる道を選ぶ。
アマトを心から愛し、彼との愛の結晶を産む。アムイの母。


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ラムウ=メイ

アマト10歳の頃より彼を守護する、セドの英雄。アマトより5歳年上の彼は、見目麗しく猛々しく、味方はもとより、敵側や他国まで羨望を集めるセドの将軍であった。彼の家は代々セドナダ家を守る将軍の家柄であり、敬虔なオーン信徒である。王家とも遠いが血筋が繋がっているとも言われている。ストイックでクールな風情。大柄ではあるが、かなりの美形で、表情をあまり崩した事がない。東の美丈夫、東の鳳凰、と言われる。“鳳凰の気”は、聖天風来寺(しょうてんふうらいじ)にて修得した。なので彼を羨望し、恋焦がれる男女も数多く、数々の告白を受けるが、彼はずっと自分の王子が神王となるのを夢見、一生を彼に捧げるためと、オーンの信徒もあって、独身を貫く覚悟だったので、全て断ってきた。
アマトが禁忌を犯すのを阻止できず、それが暗い影を落とし、彼の何かが壊れていく。それでも彼はアマトから離れられず、再び彼が禁忌を犯したと同時に、暗い闇に取り付かれる。
アムイの表の父親。

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ラスターベル・姫巫女

オーンの天空飛来大聖堂の最高位、姫巫女。幼少の頃より不思議な力を持ち、その力と大陸一美しい姿に、大陸の宝と賞賛された、神の声を聞く【光の巫女】と称される。
大聖堂の神殿で育ち、子供の頃からあまり外に出た事がない、文字通りの箱入り娘。俗世に染まらない事で、身体は大人の女性だが、心はまるで童女のような無邪気さを持っていた。ネイチェルに絶対の信頼を寄せ、いつも彼女と一緒だった。それがセドの太陽の王子によって穢され、意に沿わぬ妊娠、出産をする。神の声が聞こえなくなった、と絶望するが、死の間際で全てを悟り、天に召された。キイの母親。

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ミカ・アーニァ=セドナダ(正妃)

セド王国、タカト神王の正室。
前神王の姪の娘で、王家の中で唯一、王子達と年代が一緒だったため、将来の神王の正妃となるために育てられた。
アマト達とは幼馴染であり、彼女は小さい頃からアマトに恋焦がれていた。なので、アマトが王太子になった時、幸せの頂点に立っていた。だが、アマトが禁忌を犯すため、タカトに王太子の地位を譲ってから、彼女の地獄は始まった。無理やりアマトと関係した子供を流産し、アマトが死んだと告げられてから、彼女はますます壊れていくことになる。
…そしてアマトへの狂おしい想いが渦巻き、何年後かに、その矛先がアムイに向けられる。


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サーディオ天弓聖剛大天司(てんきゅうせいごうだいてんし)

天空飛来大聖堂、聖戦士総合大将・聖剛大天空代理司。
緩やかなくせのついた、肩までの金が混じった亜麻色の髪を揺と、灰がかった群青色の瞳を持つ。ラスターベルの弟だけあって、彼女に面差しが似て、まるで大聖堂の彫刻から抜け出たように麗しい。まさしく神の申し子、神の化身と賞された人物。もちろん、姿だけでなく、高潔で勇ましく、また頭脳明晰で小さい時から神童とまで言われたくらいの優秀さも、持ち合わせていて、文字通り、非のない人物。聖職者にして初めて、自ら聖天風来寺に修業を志願し、一発で合格を貰った。五年という短い間で、他の者が十年もかかる修業を見事にこなした、その経歴がかなりきいたようで、一年後、19歳で聖戦士の総大将、聖剛天司に就任する。将来の最高天空代理司長(さいこうてんくうだいりしちょう)では、という声が高い。姉を心から尊敬し、愛し、大切に思ってきた。その姉が穢された事にかなりのショックを受けて、事実をずっと調べ続けている。少年の頃からの剣の師匠でもあった、年上のネイチェルに憧れ、敬愛していた。なので彼女が禁忌を犯した事に、怒りと悲哀を感じている。まだ歳若い事もあって、潔癖すぎて熱くなり易い。
本編では大聖堂最高位である最高大天空代理司長(さいこうだいてんくうだいりしちょう)となっている。

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クラレンス=リジェロ銀翼天司(ぎんよくてんし)

サーディオの頼みで、10年も姫巫女の事件を探っていた、銀翼の異名を持つ聖職者。
聖職者であるが、少々背徳感のある色男風情で、危険な雰囲気をたまに漂わせている。
彼は大聖堂では優秀な聖職者であり、サーディオと同じ聖職者が多い家系に生まれ、神官となり、将来を期待されていた。…だが…。
本編にも名前だけは時たま出てくる銀翼天司。
このセドの太陽編には出てこないが、本編にて
数年後に彼の神に仕えるにあるまじき行動が公になり、罪人として囚われることになるが、王家の石盤を持って牢を脱獄し、東のある州に逃げ込む。その情報が、ゼムカ族の若き王子だったザイゼムの耳に入り、キイの出生の秘密を知る事となる。
彼の中に、善悪の区別はない。
つまりこの世の罪とされることも、道徳とされている事も、彼には全く意味がない。
人としての道徳観が全く無く、人間としての心を感じない。なので自分の利益のためならば、簡単に人としてのタブーを犯す。
まるで天に仕えた悪魔の申し子、背徳の天司、と後に呼ばれる。(ここでは詳細はありませんが)


白蘭(びゃくらん)

セド人で、セドナダ王家御用達の優秀な気術士。王家に呼ばれ、特殊な“気”を持つ幼いキイを任された。
善良で良識のある彼は、唯一のアマト達の味方。彼のお蔭でキイを取り戻すことができた。


ハル

セド人、アマト王子の守役の一人で、王子が赤ん坊の頃から面倒を見ている。故に人一倍、アマト王子を気遣う気持ちが大きく、まるで本当の親のように彼を慈しんでいる。


       随時更新中です

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2013年12月12日 (木)

近く本編を再開します

長い、ながーい間、更新できず、誠に申し訳ございません!!!

すびぱる復活でつぶやきました通り、近く本編を再開いたします。

書く書く詐欺、終わる終わる詐欺……だと重々承知しております il||li _| ̄|○ il||li」

結局、今年も終わらなかったやんっ!!


……はい、反論の余地もございません…。もうすでに見放されている気が……はっ!
いけないいけない久しぶりなのにこんなんでは先が思いやられます(≧ヘ≦)


このブログもかなり手直しして戸惑われた方もいるかと思います。
今もまだちょこちょことメンテ中でして……。

今回、人物紹介と設定を更新しました。
ココログにはウェブページというのがありまして、独立したサイトのページを作れるわけです。それを利用して挨拶とか目次とか作ったわけなのですが。欠点はそれがパソコンだけということ。つまり、モバイルにはそのウェブページが見れないのです。
そうすると、以前そこに置いていた設定やキャラ紹介も、完全に見れない、ということになってしまいます。
……挨拶や目次は仕方ないと諦めましたが、キャラ紹介くらいは……と思い、思い切って普通にブログ記事としてあげることにしました。
カテゴリを分けましたので、そうすればパソでもモバイルでもいつでもカテゴリから入ることができるなと。
とまあ、こういう事情ですので、しばらくそのような更新も多くなるかと思います(;´・ω・)


それかもう一つお知らせがあります。

今までこうして本編の合間につぶやきやら近況やらをしてきたのですが、これから最終章に突入し、できればこのまま一気にいきたいのと、自分勝手なつぶやきでその勢いを潰したくないなぁ…と思いまして、別のところにそれ専用のブログを立ち上げました(汗)
もちろん、こちらに立ち寄ってくださる方々に、どうしてもお知らせしたい事は本編の合間にも書くかもしれませんが、基本、創作活動兼近況の報告はすべて新しいブログでさせていただくことにしました。
もちろん、この創作図鑑にアップする小説中心に、他で書く(予定の)作品などの更新報告も兼ねております。
なるべく小説だけに読むのを専念したい、と思う方がいるかもしれない…という勝手な思い込みで、分けてしまいました。
どうかご了承くださいませ。

近況・活動報告(又はつぶやき)専用ブログ《栢ノ守創作図鑑伝言場》はコチラ


◆ ◇ ◆

で。
本編なのですが、今週もしくは来週中に再開目途がつきました。
長らくお待たせしてすみません。(…いや、待ってないかも…)

実はパソコンがぽしゃり、調子の悪いもう一台を何とか修復したいとあがいたのですが、リカバリーディスクを紛失し、まだまだ復旧が難しい……。
で、拝み倒して店のパソコンを現在使わせてもらっています!(い、いいのか…?)

それに救い出した今までのデーターを移動させ、家に帰ってから作業をしております。
……一時期、ネットカフェのお世話になっていたので、時間を気にせず作業、ネットを繋げられる幸せに浸ってまふ♡

それでも早く自分のパソコンをどうにかせんとあかんのですが!

お気づきの方もいらっしゃると思いますが、章が変わっております。一章増えてます。(内容は変更ありませんが)

あと1,2話終えたら、やっと15章『光輪発動』に入ります。その山超えたら最終章(16章)『永久なる鼓動~東へ~』です。

結局来年までかかってしまいますが、今以上気を引き締めて取り組んでます。
ご縁があったらこれからもよろしくお願いします。


    kayan(栢ノ守くれは)

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2013年12月11日 (水)

人物紹介(本編メイン)

《登場人物》

★アムイ=メイ
(異名・【暁の明星】……呼称・《暁の御方・暁・暁の君(後半)》
  25歳。黒髪・黒目。
 武術の伝道・聖天風来(しょうてんふうらいじ)出身。気術では最高峰の王者級の“金環きんかんの気”を持つ。無法地帯の東の国での武勇伝が、大陸全土にその名を轟かせる。他人には無口で無愛想。基本的に人を寄せ付けたがらない。かなり尊大な態度を取っているが、本当は優しい心を持っている。
 子供の頃に受けたトラウマで、一部記憶を封印している。人とどう接したらよいかわからない。相方のキイとは深い絆があり、彼を求めてさすらい続けている。

★キイ=ルファイ
(異名・【宵の流星】……呼称・《宵の君・宵》 本名(ほんな)はキイ・ルセイ=セドナダ
 27歳。真鍮に似た色味の濃茶の髪色。鼈甲色の混じる焦げ茶色の目。
 アムイと共に聖天風来寺を出て、“恒星の双璧”という呼び名でアムイと共に恐れられる。現在、事情により不服ながら囚われのお姫様状態。
“気”が流動的という特徴のため、常にコントロールを余儀なくされている。
 男だが、浮世離れした絶世の美貌の持ち主。男も女も虜にするフェロモン垂れ流しのエロスの塊のような男とも囁かれている(アムイいわく、大げさだ、との事だが)流星の異名は“気”の流動からくる。川のように流れ流れて、あちらこちらとぶつかり、そのため早熟で順応力があり、悟りも早い。“気”の不安定さをアムイの“気”の安定で補っているが、流動の割には心は強靭で流されにくい。麗しい姿と反対に男性性が強い。無類の女好きでも女性を敬うので、多数の女性と浮名を流しても全く一度もトラブルになったことがない、という得な性格。わざとなのか地なのか、かなり口も態度も悪い(対男性)。父を同じくするアムイを幼い頃から深く愛している。
 


★イェンラン(=ミン)…呼称・イェン、お嬢
 18歳。癖のある黒髪。黒目。
 中央国の娼館《桜花楼》に、15才の時、親に金で売られた少女。その時に偶然出会ったキイが忘れられず、彼を追ってアムイ達と供にさすらう。
 女として生まれた事に怒りを感じ、性を忌み嫌っている。直接的にいうと、彼女は男性が怖くて、性的なことが嫌。それでも心の底では自分の女らしい部分は捨てたくないところがあり、どんなに男を遠ざけようと、男らしく気が強く振舞っても、男から見てやはり愛らしさを捨てきれてない。気丈だが割りと素直な一面も持つ。実は好奇心と向上心が強い。北の国、モウラ出身。

★サクヤ(=マキカド)…呼称・サク
 25歳。黒髪、黒目。
 背は中背よりも心持ち低い。(チビチビ言われるが、実際そうではなく、ほぼ標準←いつも絡んでくる相手がただデカイだけ)割と筋肉質。顔は可愛らしいが、あまり自分をよく見せようとする気がさらさらない。明るく前向き。打たれ強い。
 強くなりたいがため、10年前国を出て武者修行の旅に出る。その過程でアムイの強さに惚れ、どんなに疎まれようが自称弟子としてまとわり付いている。頭の回転が早く、人の心を掴むのが上手く、そうやって器用に世間を渡り歩いてきた。特にガタイのいい屈強なタイプや、年上の同性に異常に好かれるようで(しかもかなりの粘着質に)、小さい頃から苦労している。アムイには天然と思われてるが、本当は全て把握しているような食えない男。年上の美女に弱い。彼もまた心に抱える闇を持っている。それを越えようと必死で生きている。

★シータ=シリング
 ?歳。淡い金髪。琥珀に似た茶色の目。旅の途中で合流する、アムイとキイの聖天風来寺での同期門下生。
 サクヤが年上の綺麗なお姉さん、と間違えるほどの美人で、かなり派手な格好しているが、正真正銘の男。言葉もオネエ言葉で、男臭さを感じさせない。何故こんな格好をしているのかは、謎。ただ、女性の格好が好きなだけ、という話もある。
 年齢の事を言われるのが嫌い。だけど同期の中で一番の年上で、アムイとキイの幼い頃から知っている。皆には一応年齢不詳としている。お節介焼きな所と、説教臭い所に、アムイとキイはうんざりする事が多い。だが見かけによらず強靭で、かなりの使い手。プライドの高いキイとは犬猿の仲と言われているが、実際はわからない。何かと二人に詳しくて、何かと二人を心配している。

★アーシュラ=クロウ
 28歳。黒髪、黒茶色の目。
 男だけの一族ゼムカのザイゼム王の腹心。護衛隊長。影のように王に仕える。聖天風来寺出身。特待生として、数年間、キイとアムイの同期生として一緒に学ぶ。ずっとキイの友人として接してきているが、本当はキイに心から惚れていて、彼とザイゼム王との間で心が揺れている。キイが男を受け付けないタイプと知ってるが故、自分の気持ちが成就するとは露ほども思っていない。表向きは冷静で、あまり自己主張しなさそうだが、内面はかなり熱く、特にキイの事になると感情的になる事が多い。キイに依存しているアムイに苛立ちを覚え、アムイが男なのにキイに愛されていることで、益々アムイを嫌うようになる。

★ヒヲリ
 22歳。緩やかで波打つ茶色の髪。焦げ茶色の目。
 桜花楼、最高の娼婦【夜桜よざくら】候補といわれる中級娼婦【満桜みざくら】。2年前、アムイに助けられ、彼が客の常連となってから、心惹かれ、恋するようになっていく。だが、気持ちは誇りを持って最高娼婦を目指している所から、アムイの事を半分客人として考えている。そしてその半分は、恋する気持ちに翻弄されている。アムイに抱かれながら、彼の心の中には絶対的な大切な存在の影を感じて、切なくなっている。

★雷雲(らいうん)
 桜花楼第一城内【満桜】番頭。格闘おたく。

★昴(こう)老人
 北の国・北天星寺院で修行した僧。北天星を隠居し山篭りする前に、俗世を楽しもうと旅をしている、謎の老人。
 実は大陸の賢者衆のひとりで、北の国、北天星寺院(ほくてんせいじいん)の最高位である、気術の権威、昴極大法師(こうきょくだいほうし)である。

★ザイゼム=ギ・ゼム
 43歳。黒髪、黒目。男だけの流浪の民、ゼムカの国王。
 豪傑で冷淡、気ままで自由奔放、飽きっぽい。野性味でカリスマ的魅力がある。腹心のアーシュラいわく、愛という対象での特別な人間を持たない人だったが、野望の対象としてキイを追ううちに、気になる存在となっていた。その本人を初めて見たときから心を奪われ、彼を軟禁状態にする。

★ルラン
 17歳。黒髪、青い目。ザイゼムのお付きのひとり。王の身の回りの世話をしている。世で言う小姓のひとり。
 ゼムカ人としては珍しい青い瞳を持ち、キイが意識を閉じてからはずっと彼の世話をしている。キイいわく、損得なしで、ただ愛し受け入れる、純真無垢な魂を持ちながら、精神年齢の高い少年である。12歳の頃からずっと憧れていた王の近くに仕える事になり、彼の寵愛を受ける事になるが、キイの存在があってからは、ずっと寂しい想いを抱えている。王を心から愛している。

★ティアン=ネイオン宰相
 南の国、リドンの宰相。気術師として賢者衆の一員だったが、リドン大帝に見込まれ宰相となる。自分の師匠がセド人で考古術師だった、という縁で、やけにセドの秘宝に詳しい。その情報で、大帝に取り入り、キイを狙う。

★リシュオン=ラ・ルジャング
 23歳。茶褐色の短髪、西の国の特徴である青い瞳。西の国ルジャンの第四王子。
 尊大な所はなく、優しく爽やかな青年で、女性を大事にするフェミニストである。その反面、意外と行動派で、10代の頃からあちらこちらに旅に出、最終的にははるか遠くの外大陸そとたいりくまで足を伸ばし、視野を広げた。先見の明があるが、覇王となる資質はない。その紳士的で知性派な所が女性に人気があり、彼の妻になりたがる女性は数多多くいる。
 北の姫君のお供で北にいた時、イェンランに出会い好意を持つ。大陸の平和を常に考えている。

★アイリン=モ・ラウ
 9歳。亜麻色の髪、灰褐色の瞳。北の姫君。
 母は、天空飛来大聖堂の最高位である神官、サーディオ最高大天司長さいこうだいてんしちょうの末妹リサベル。親子以上歳の離れた北のミンガン王に後妻として嫁ぎ、アイリンを産んだ。心の優しい綺麗な女性であったが、残念なことにあまり身体が丈夫ではなく、アイリンが7歳の時に病で死んだ。彼女には先妻の妃の間に生まれた、成人した兄が3人いる。一人は死、長男は南の国に通じ、三男は西の国と手を繋ぎたがっている。父王には娘と同様、頭の痛い状況である。
 アイリン本人は、神官の伯父を持ち、しかも大聖堂の姫巫女だった伯母を持つ事から、巫女の能力を持つとされ、オーンから所望されていた。しかし彼女は自分の心に聞こえる声と自分の気持ちに従って、9歳にして俗世に留まり、普通の人として愛のない結婚を選ぶ。

★フェイとレン
 9歳。茶色の髪、黒目。アイリン姫の乳兄妹で双子の男の子。
 フェイは素直で大人しく、案外思慮深い。レンは反対に口が悪くて粗野な所があるが、人気者。
 子供の頃からアイリンを二人でずっと守っている。特にフェイは、アイリンを過保護すぎるくらいに大切に扱う。
(この物語には出ませんが)そのため、彼女の輿入れに辛い思いを抱えている。レンは意外とさっぱりしている方である(単純な性格が幸いしている)。

★ガーフィン=リド(大帝)
 36歳。赤茶色の髪、濃い水色の目。【氷壁の帝王】という異名を持つ南の国リドンの大帝。
 冷徹で計算高く非常に残酷な性格で、独裁者として君臨している事から、南の男には不似合いな【氷壁の帝王】という異名で呼ばれ、恐れられている。若くして帝王の座についたが、どちらかというと実戦には向かず、玉座に座り、従者を手足のように動かす事が多い。(唯一、実妹に弱い)

★リー・リンガ=リド
 30歳。赤毛、青い目。南の国、リドンの王女。
 大帝の同親(どうおや・両親とも同じ兄妹)の妹であり、兄である大帝には眼に入れても痛くないほど可愛い妹らしい。小さい頃から自分の女としての魅力に気づき、それを武器に周りの男達を意のままに動かしていた所があった。あの女性に弱いキイですら、(彼女は自分の女を謳歌しているから放っとけ)とまで言わせた女性である。4回の結婚、離婚暦がある(ほとんど政略結婚)。とにかく若くて綺麗な男が好きで、それらを虜にし、侍らすのが好き。火遊びが過ぎて、離縁になった事もしばしば。だが、それでも国と尊敬する兄のため、ちゃんと妻としての義務は果たしていた。
 火遊びのつもりで手を出そうとしていたアムイに本気になってしまい、彼の子供を産むことに執念を燃やしている。意外と行動的(自分でやらなきゃ気がすまないひと)

★ドワーニ=ラルゴ(大将軍)
 多分40代後半。銅色の髪、茶色の目。
 ガ-フィン大帝の左腕である帝国軍大将。“煉獄の気”修得者。

★モンゴネウラ=ブルドン
 50代後半。白髪混じりの金髪、緑色の目。
 リンガ王女を子供の頃から守っている護衛官長。厳つい大男だが、貴族出身で品と教養のある男。

★ シャイン王
 西の国の国王。保守的だが、自分とは反対の改革派、四男リシュオンに一目置いている。

★ペイン王太子
 西の国次期国王。父王とよく似ていて、保守的。第一王子。
   息子→長男(次期王太子)キース…我儘に育つ。アイリンの夫。13歳。
   〃  →次男ケイン…兄と違って、しっかりしていて物怖じしない性格。11歳。

★ミンガン王
 北の国の国王でアイリンの父。高齢で、孫ぐらいの年齢の一人娘を愛し、気にかけている。

★故 聖天師長(しょうてんしちょう)竜虎(りゅうこ)
 前任の聖天風来寺の最高位。キイとアムイの育ての親。
二人の事情を知っていた…?3―4年前に他界。

★凪(なぎ)
 年齢不詳の小柄な男。なんでも屋。情報提供も。アムイと懇意。


※メインはもっと人物が増えます。随時加筆します。
 イラスト画のあるキャラは後ほどアップします。

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設定(本編メイン)

※※2014年11月2日…内容を追加しました※※

《果ての大陸》……果ての大陸の五大国にはそれぞれ自然を特徴とする別名がついている


十何年前かに、東の国を統合していたセド王国が滅び、現在カオス状態の東の国
【三民族、六州村(実際はセド王国のような小国が三つでそのうちのセド王国は消滅し、四つの州と大きな村が二つと小さい村は把握できないぐらい多く、民族も細かく分ければ八民族くらいにはなる規模の、大陸一広大な国である)その他に、東の国には独立した国や島があり、その代表が北端にある聖天風来寺がある聖天山だったり、南端にある神の国オーンである。そして島が多い東では、島民と大陸民が共同に住まう島が多いが、中には昔からの自治を貫く島がある。それは東で一番大きい島国、キサラ島のキサラ族が有名だが、東端に位置する島々を統べる、閉鎖的な民族ユナも密かに東の国では知れ渡っている】
 東の国は風が多く、その風力で生活できるほどの風神が支配する国である。ただ、東の国は他の国よりも広大過ぎて、単に風の国とは言えないのであるが、そこは風神信仰の独特の自治権を持つ聖天山しょうてんざんの聖天風来寺の影響が強く、同じく東でも最南端にあるオーンは神国として完全に独立している。


中央の中立国・ゲウラに、最高級の女を集める天下の桜花楼
 中立を保つ中央の国は鬱蒼とした森林の国でもある。娼館である桜花楼おうかろうの桜がセドから移植され、育てるのが難しいとされているのに見事に増えて咲き誇る事ができたのも、木の育つ最高の環境があったからであろう。中央は緑成す木の国でもある。国営として始めた娼館も、今や自治区となっている。
多種多民族が集まる、大陸五大国の中で一番小さい国。【女神の初めて降り立った地、としても有名である】


野心の王が統べる、独裁国家の南の国・リドン
 南は灼熱の国で、火の気が多いことから火の国と呼ばれ、その国教も火竜を崇める炎竜教(えんりゅうきょう)の炎剛神宮(えんごうじんぐう)である。

友好的で先見の目を持つが、意外と保守的な西の国ルジャン
 西の国は水天龍宮すいてんりゅうぐうにて海神を祀る事から水の国と呼ばれ、外大陸に向けて港が発展している大陸一の貿易国であり、かなり裕福。大陸でもっとも女が多く、女にとって一番暮らしやすい国。大陸の表玄関。

荒れた荒野の貧しい北の国モウラ
 土の国と呼ばれる北の国は鉱石が豊富で、元々は土壌の豊かな広大な土地を持つ。国教は星を崇める北星教ほくせいきょうの北天星寺院(ほくてんせいじいん)ではある【北の国では上質な輝石(主にヒスイ)を星と同一する所から何ら関連性があるのかもしれない】昔に起こった災害や飢饉やらで今は他国に頼らなければならないほどに国力が弱っている。
 

これが果ての大陸五大国

〈その他)
★男だけの流浪の民、ゼムカ族《ギ・ゼムカ王制一族》

★人・智・体・心を磨き育成する武術・気術の修行の聖地、聖天風来寺(しょうてんふうらいじ)。
 ◇…最高位・聖天阿闍梨風師長(しょうてんあじゃりふうしちょう)・略称『聖天師長(しょうてんしちょう)』


★大陸全土の神を統括する教会、天空飛来大聖堂(てんくうひらいだいせいどう)のある、神国オーン。
 ◇…最高位・最高大天空代理司長(さいこうだいてんくうだいりしちょう)・略称『最高大天司長』
         聖職者・天空代理司(てんくうだいりし)・略称『天司(てんし)』

◇ ◇ ◇

※役職名などは後ほど追加いたします。


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